忠清南道扶余郡で9年間マッシュルームの生産を営んできたキム・ミョンシンさんの農場を訪れた。660平方メートル規模の薄暗い倉庫に入ると、4段に分かれた棚から白いキノコが小さく芽生えていた。今年2月に植え付けたキノコ菌が、1カ月で10ウォン玉の大きさに育ったという。キムさんが育てている品種は、農村振興庁が2017年に開発した「トダム」という品種。他のマッシュルームよりも色が白くて形が完全な円型に近いため、商品性が高い。キムさんは「外国産の種菌(キノコの種)を使うにはロイヤルティーまで支払わなければならないが、国産の種菌は20%ほど安いほか、品質も高いため、20%ほど高く売れる」と笑みを浮かべる。
韓国は今年、植物新品種保護国際連盟(UPOV)への加盟20周年を迎えた。UPOVは、音楽アルバムやソフトウエアの特許のように、食品の種も知的財産権で保護しようとの趣旨で設立された国際機関だ。UPOV加盟後、外国産の品種を搬入する際に支払わなければならないロイヤルティーを節約しようと始められた韓国産種子開発が、農家所得の増進に大きく貢献している。
■イチゴの種を輸入していた韓国、今では輸出国に
農村振興庁によると、野菜や花卉(かき)、果樹、特殊農産物などの4分野13作物により支払われるロイヤルティーは、2012年の175億7000万ウォン(約17億6000万円)から昨年は95億8300万ウォン(約9億6000万円)へと半減した。作物を栽培する際、国産品種をどれだけ使用しているかを示す国産化率は、10年前の17.9%から昨年は29.4%にまで上昇した。2012年に44.6%だったキノコの国産化率は昨年60%になった。特にマッシュルームは、国産品種のトダムのおかげで国産化率が72.3%にまで上昇した。開発費4億ウォン(約4000万円)を投じて開発した「トダム」は、農村振興庁が作った「セア」「セハン」などの品種を再改良したものだ。トダムを開発した農村振興院のオ・ヨンイ農業研究士は「セハンを育てたキノコ栽培士(農民)たちからキノコの形が楕円(だえん)形だと指摘され、新しく開発したのがトダム」とし「トダムは柔らかさも改善されたほか、冷蔵保管期間も1-2日間伸びた」と改良に伴う効果について説明する。