韓国銀行が発表した「金融安定状況報告書」によると、韓国の家計と企業の債務を合計した民間債務が昨年末時点で国内総生産(GDP)の220.8%に達し、1975年の統計開始以来最高を記録した。民間が負っている債務が国の経済規模の2.2倍に達しているという意味だ。低金利が続き、低コストで資金を借り入れられる条件が整う中、現政権の不動産政策失敗に伴う住宅価格高騰でマイホームを購入するために家計が多額の借金をしたことが主因として挙げられる。
韓国の昨年の名目GDPは2057兆ウォン(約206兆円)のだったため、民間部門の債務は4540兆ウォンに達した計算になる。対GDP比で家計債務は106.1%、企業債務は114.7%で、いずれも韓国の経済規模を上回った。民間債務の対GDP比は2017年第4四半期(181.9%)以降、16四半期連続で上昇を続けている。経済規模の拡大を上回るペースで民間の借金が膨らんでいることを示している。
民間債務の対GDP比は文在寅(ムン・ジェイン)政権下で、17年第2四半期(182.6%)に比べ、昨年末までに38.2ポイント上昇した。朴槿恵(パク・クンヘ)政権で13年第2四半期(177.5%)から17年第1四半期(181.3%)までの期間に3.8ポイントの上昇にとどまったことと比較すれば、現政権になって、まるで手綱が外れたかのように債務が爆発的に増えたと言える。李明博(イ・ミョンバク)政権で16ポイント、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で12.2ポイント上昇したのと比べても、現政権での民間債務の増加ぶりが目立つ。
債務が急速に増加したため、家計の債務返済能力が低下している。昨年第3四半期現在で家計債務は家計の可処分所得の173.9%となり、過去最高を記録。昨年第4四半期も173.4%で高止まりしている。家計債務の可処分所得に対する割合は現政権が発足した17年第2四半期には152.9%だった。その後、昨年末まで四半期ごとの家計債務の増加は可処分所得の伸びを上回っている。
■自営業者への融資900兆ウォン超
韓銀は新型コロナにより、自営業者の売り上げが減少する一方、債務が増加し、不良債権化の懸念が高まっていると分析した。金融機関による自営業者への貸出残高は昨年第4四半期現在で909兆2000億ウォンで、前年同期比13.2%増加した。同じ期間に家計債務が7.6%増加したのと比べ、自営業者の債務は急速に膨らんだ。自営業者への融資はコロナの流行が拡大し始めた20年第1四半期以降、四半期ごとに10%以上増えた。
特に自営業者の世帯のうち、必須支出額と債務償還額が所得を上回り、時がたつにつれて貧窮するいわゆる「赤字世帯」が増えており、経済の不安要素になっている。自営業者の赤字世帯はコロナ流行初期の20年3月には70万世帯だったが、昨年末には77万8000世帯に増えた。自営業者世帯全体の16.7%に達する。
自営業の赤字世帯による金融機関への債務は20年3月には135兆ウォンだったが、昨年末には177兆ウォンへと42兆ウォン増えた。これは自営業者世帯の金融債務全体の36.2%に相当する。赤字世帯のうち現在保有する金融資産で赤字を持ちこたえられる期間が1年未満で、不良債権化しかねない「危険世帯」は27万世帯程度と推定される。
韓銀は今年9月まで延長された自営業者に対する融資返済猶予措置が終了すれば、赤字世帯の債務がさらに膨らむ可能性が高いと予想。返済猶予措置が一律終了となった場合、赤字世帯の金融債務は最大58兆ウォン膨らむと分析した。韓銀関係者は「(融資返済猶予など)コロナに伴う金融支援政策は、売り上げが低迷する自営業者の資金事情にかなりの影響を与える点を考慮し、段階的な出口戦略を立てる必要がある」と指摘した。
金信永(キム・シンヨン)記者、孫振碩(ソン・ジンソク)記者