ソウル中央地検は3日、黄武性(ファン・ムソン)元城南都市開発公社社長に辞任を迫った疑惑で告発された民主党大統領候補の李在明(イ・ジェミョン)氏、同公社のユ・ドンギュ元企画本部長について、嫌疑なしとの判断を下したことを明らかにした。法律専門家や検察内部からは「典型的な手抜き捜査に続くお手盛り処分」だという批判が出ている。
疑惑は2015年2月6日に同公社で当時開発事業本部長を務めていたユ・ハンギ氏(死亡)が黄武性社長に対し、李在明城南市長について3回、チョン・ジンサン城南市政策局長(現共に民主党選対秘書室副室長)について8回、ユ・ドンギュ企画本部長について12回言及するなどして辞任を強要し、辞表を提出させたとの内容だ。
黄武性氏とユ・ハンギ氏の会話が録音された40分間の音声ファイルが昨年10月に黄元社長によって公開され、上部による介入疑惑が本格的に浮上した。ユ・ハンギ氏が単独で直属の上司である黄元社長に辞表提出を強要する可能性は低いと考えられるからだ。
ところが、ユ・ハンギ氏は検察の捜査を受けていた昨年12月10日に自殺した。その後、捜査を引き延ばしてきたソウル中央地検は同日、李在明候補らを嫌疑なし、死亡したユ・ハンギ氏を公訴権なしとして処理。「事件関係者の陳述、録音記録、辞表、関連公文書などを総合した結果、ユ・ハンギ氏が他の被疑者と共謀し、黄元社長の辞任を強要、脅迫したか職権を乱用したと見るに足りる証拠はない」と説明した。
ソウル中央地検は黄元社長が「大庄洞事業の公募指針書を決裁したことはない」という趣旨の主張を行っていることについても、「(公募指針書が)偽造だったと見るに足りる証拠はない」とした。
これについて、検察周辺からは「重要証拠である録音記録があるにもかかわらず、『上部』全てに免罪符を与え、亡くなったユ・ハンギ氏の単独行動だという結論を下したものだ」とする批判が出ている。
実際に黄元社長とユ・ハンギ氏の会話記録には、ユ・ハンギ氏が「社長の命を受けてやったことではないですか。社長の言葉です。きょうでなければ(きょう辞表が提出されなければ)社長も私もひどい目に遭います」という発言で黄元社長に圧力をかける部分がある。また、黄元社長が「チョン室長とユ(・ドンギュ)本部長が君に(辞表提出要求を)押し付けているのか」と尋ねると、ユ・ハンギ氏は「そうなんです。ですから両方とも」と答えている。黄元社長は同日深夜に辞表を提出。1カ月後の15年3月に辞任し、ユ・ドンギュ氏が社長職務代行を務めた。
これについて、李在明氏は昨年10月、記者団に対し、「あの方が辞める際、退任のあいさつをしに来て、『なぜ辞めるのか』と思った。『(仕事が)合わなかったからなのか』と残念に思った記憶がある」と述べ、辞任圧力疑惑を否定した。
これまでソウル中央地検が与党の意向に沿った捜査を行ってきたという批判もある。李在明氏には書面を含め、いかなる方式の調べも行わなかった。李在明氏の「腹心」であるチョン・ジンサン氏に対する聴取は捜査開始から103日目の1月13日にひそかに出頭を求めただけだった。「被害者」である黄元社長の聴取は昨年10月31日が最後だった。
黄元社長は本紙の電話取材に対し、「承服できるはずがない。(検察が)ずっともみ消しを図り、こんな結論を下したわけだが、録音記録の内容だけでもまともに捜査していれば、こんな結果は出なかったはずだ」と述べた。法律専門家は最近大法院で有罪が確定した「環境部ブラックリスト事件」を挙げ、「味方ではない人物を不当に追い出す構造はほとんど同じだ。与野党の大統領候補によるテレビ討論会が開かれる日に『嫌疑なし』の処分を公表したことを見ても、中央地検が政治的な決定を下したものだ」と指摘した。
一方、この事件の職権乱用容疑の公訴時効は当初2月6日だったが、告発者である司法試験準備生会が先月、裁定申請を行い、時効が停止している。裁定申請は検察ではなく裁判所に起訴の是非を判断するよう求める制度だ。
表泰俊(ピョ・テジュン)記者、イ・セヨン記者