日本による植民地支配期に韓国人たちが強制労働させられた新潟県の「佐渡島の金山」を、日本政府が世界文化遺産に登録するため、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することを決めた。岸田文雄内閣は当初、韓国・中国の反発と現実的な登録の可能性を懸念して推薦見送りを検討したが、方針を突然変更した。安倍晋三元首相ら自民党内の強硬右派が「佐渡島の金山」問題を「歴史戦」と規定・展開した世論形成に白旗をあげたものとみられる。今回の「佐渡島の金山」の世界遺産推薦で、韓日間のあらたな確執発生が避けられなくなりそうだ。
岸田首相は28日午後、官邸で記者らに、「(『佐渡島の金山』を世界遺産に)登録するためには、いつ申請するのが効果的かという物差しに従い、冷静に検討を続けてきた。本年申請し、早期に議論を開始することが登録実現への近道との結論に至った」「世界遺産登録のため関係省庁横断型のタスクフォース(TF)を設置し、歴史的経緯を含め、さまざまな議論に対応する」と明らかにした。推薦期限である来月1日に閣議了解し、ユネスコに推薦書を提出する予定だ。岸田首相は、韓国の反発については「韓国には独自の意見があるのは承知している。だからこそ冷静で丁寧な対話を行っていきたい」と語った。
日本のメディアによると、岸田内閣は韓国・中国が反発する中で推薦を強行して審査で落ちれば、再推薦で登録される可能性がほとんどないことを懸念していたという。「韓国・中国の主張に反論する論理と根拠を用意した上で推薦した方がいい」という主張が内部では強かった。ところが、安倍晋三元首相ら自民党強硬右派の議員らが岸田首相に強い圧力を加え始めた。数回にわたって、「(韓国などに)歴史戦を挑まれている以上避けることはできない」「国家の名誉にかかわる」と主張し、「佐渡島の金山」問題を国内政治問題化したのだ。すると、今年7月に参議院選挙をしなければならない自民党のムードも変わり始めた。自民党強硬右派の主張に屈服して方針転換したのではないかとの指摘に、岸田首相は「決定は今日下したもので、全く当たらない」と言ったが、日本のメディアは一斉に「内閣の方針が完全に変わった」と報じた。
これと関連して、韓国外交部は同日夕、相星孝一駐韓日本大使を呼び出して抗議した。また、この発表直後、同部は報道官声明で「強い遺憾を表明し、このような試みを中断することを厳重に求める」と述べた。「日本政府は2015年の世界遺産登録時に約束した後続措置をまずしなければならない」という点もあらためて強調した。軍艦島(長崎県端島)などを含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された際、日本は強制労働の歴史を説明し、被害者を追悼する後続措置を取るとしていたが、これを守っていないことを批判したものだ。東京の消息筋は「『佐渡島の金山』の登録時期を強制労働とは無関係の『江戸時代』に限定しているのは、『明治日本の産業革命遺産』の時と同じパターンだ」「丁寧で冷静な議論を語る前に、日本は自らの約束をまず守る真摯(しんし)さを示さなければならない」と語った。
東京=崔銀京(チェ・ウンギョン)特派員