「50年かけて育ててきたポスコの本社がソウルに移転したら、浦項には何が残るのか」
今年3月に韓国の鉄鋼大手ポスコが投資型持株会社「ポスコホールディングス」体制に移行するのを前に、ポスコ本社のある慶尚北道浦項市の市民と同地域の政治家たちが反発している。持株会社に移行すれば、これまで本社だったポスコは、ポスコホールディングスの鉄鋼部門を担う子会社に格下げされ、本社の場所も、浦項ではなくポスコホールディングスが設立されるソウルに変更になる。浦項市民は「地域の経済力が低下するのではないか」と懸念しているが、ポスコ側は「浦項への投資は続く予定で、鉄鋼分野事業も現状通り進められるだろう」と説明した。
国会疎通館では27日、慶尚北道の李轍雨(イ・チョルウ)知事や浦項市の李康徳(イ・ガンドク)市長らが「地域均衡発展に逆行するポスコ持株会社のソウル設置反対共同声明書」を発表。声明書で「地方都市が崩壊寸前なのだから、(ポスコは)50年にわたって共に歩んできた地域住民のために共生案と対策を講じよ」と主張した。野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領選候補にも関連の内容を伝えた。
ポスコは昨年12月の理事会で、事業部門を100%子会社に分割する計画案を議決した。既存の上場法人は「ポスコホールディングス」という名の持株会社に転換し、今後は鉄鋼事業を担う子会社が「ポスコ」の社名を使用する。「ポスコ」の株式は持株会社が100%保有することになる。ポスコホールディングスは、ポスコをはじめ、建築分野のポスコ建設、二次電池素材のポスコケミカルなどを子会社として抱える。ポスコ側は持株会社への移行の理由について「新成長事業と企業価値を高めるため」と説明した。
しかし、現在ポスコの本社がある浦項では、ポスコが本社から子会社に変わることを歓迎しない雰囲気だ。持株会社のポスコホールディングスが新成長事業に集中すれば、子会社であるポスコの鉄鋼事業と浦項市の二次電池産業などへの投資が相対的に弱まるのではないかと懸念しているのだ。
浦項市庁ではこの日、浦項地域発展協議会の関係者たちが、ポスコホールディングスと研究・開発機関「未来技術研究院」を浦項に設立するよう求める記者会見を開いた。協議会のコン・ウォンシク会長は「急変する企業環境の中で、持株会社への移行後に新産業を育成することには賛成する」としながらも「持株会社が浦項に設立されないのなら、浦項の二次電池など新産業に対する投資が優先されない懸念がある」と述べた。
一方のポスコ側は、持株会社への移行後も特に変化はないとの立場だ。ポスコの関係者は「持株会社に移行しても、ポスコの鉄鋼事業は今までどおり重要な育成産業として残り、地域に対する投資も続ける予定」として「一部では減少を懸念する地方所得税もそのまま維持され、人材流出も極めて少ないか全く発生しない予定」と説明した。
ポスコは28日、ソウル・大峙洞のポスコセンターで臨時株主総会を開き、持株会社への移行を確定させる予定だ。持株会社と子会社は、分割日となる3月1日に発足することになる。浦項市の李康徳市長をはじめ、浦項市議会・浦項地域発展協議会の関係者など約20人は、ポスコセンターの株主総会を訪れて抗議し、地域共生に関する対策を促す方針だ。
イ・スンギュ記者