「小国が身の程を知らずに…」 傍若無人の中国に抗議もできない韓国(上)

米中対立時代の「韓中修交30年」
絶えることのない対中事大外交

 昨年6月10日、韓国外交部(省に相当。以下同じ)は大騒ぎになった。中国外交部が、韓中外相電話会談のニュースを伝えるとともに、非公開にすると双方が合意していたデリケートな内容を一方的に発表したのだ。中国側の発表によると、中国の王毅外相は米国の中国けん制構想であるアジア・太平洋戦略を猛烈に非難し、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相に向けて「(米国の)偏ったリズム(変節奏)に巻き込まれてはならない」「良しあし(是非曲直)を把握して正しい立場を堅持すべき」と言うなど、訓戒のような発言を浴びせた。

 対等な主権国家の間でやりとりしたものとは信じ難い対話だった。しかも、相手が困った立場になる内容を公開して不意を打つのは、外交的にはタブーに属する非紳士的な行為だ。ところが韓国側が中国に抗議したという話は聞かない。外交関係者の間からは「韓中関係30年の現在地を示す端的な場面」という声が上がった。

 中国を相手にしたことのある元職・現職外交官の相当数は「中国の非外交的振る舞いに当惑したことは多い」と語る。中国の外交司令塔である楊潔チ・中国共産党政治局委員が2018年と2020年に訪韓した際、「ソウルで会おう」という韓国側の提案を一蹴して当時の青瓦台(韓国大統領府)国家安保室長(18年は鄭義溶、20年は徐薫〈ソ・フン〉)を釜山に呼び出したのが代表的な例だ。中国の無礼は党派を問わなかった。李明博(イ・ミョンバク)政権時代(10年11月)、「韓国へ行くのでソウル空港を空けてほしい」という一方的な通知とともに中国を出発した戴秉国・国務委員(外交担当)が、到着と同時に大統領との会談を要求して韓国外交部が当惑した-というエピソードは今もよく語られている。

 韓国のことを、口では「戦略的パートナー」と呼びつつ実際には属国のような扱いをする中国の傍若無人な態度は、「小国は大国に従うべき」という中華思想・大国主義から来るものだというのが中国専門家らの診断だ。習近平主席からして、17年4月の米国トランプ大統領(当時)との会談で「韓国は歴史的に中国の一部」と発言するなど、中国高官の時代錯誤的韓半島観は根深い。

 高句麗史を丸ごと盗んでいく東北工程、キムチ・韓服・テコンドーはもちろん民族詩人の尹東柱(ユン・ドンジュ)まで中国のものだとする強引な主張も、ゆがんだ歴史観と軌を一にするものだ。中国の軍用機が西海に設定された韓国の防空識別区域(KADIZ)へ日常的に無断侵入するなど、西海全体を中国の「内海」にしようとする西海工程がますます大胆かつ頻繁になっているのも、同じ流れに属する。

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