新型コロナ大流行に対抗するための新兵器「経口治療薬(錠剤)」が米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を受けて本格的に登場することになった。従来の注射型治療薬とは違い、飲み込める錠剤タイプなので使いやすく、デルタ株にもオミクロン株にも効果があると言われており、「ゲーム・チェンジャー(Game Changer=状況を一転させる人・もの)」という声も聞かれる。
【グラフ】主要国の新型コロナ死亡者数比較(12月6-12日)
米FDAは12月22日(現地時間)、「ファイザー社が開発した経口用新型コロナ治療薬『パクスロビド(Paxlovid)』とメルク社が開発した『モルヌピラビル(Molnupiravir)』を緊急使用許可した」と発表した。デルタ株に続き、オミクロン株が米国をはじめとする全世界にあっという間に広まっているため、対応速度を上げたものだ。米国が経口用新型コロナ治療薬を許可したのは今回が初めてだ。韓国食品医薬品安全処(省庁の1つ)もパクスロビドに対する緊急使用許可を検討中で、今月中にも最終許可が出るものと見られる。
FDAは「パクスロビドは新型コロナによる入院・死亡リスクを88%減らすことができる」と明らかにした。一方、モルヌピラビルはその効果が30%程度だと言われる。
世界各国はファイザーとメルクの経口薬をできるだけ早く、より多く確保するために奔走している。ジョー・バイデン米大統領は「パクスロビドを1000万人分確保した」と明らかにした。モルヌピラビルは310万人分を確保している状態だ。英国はモルヌピラビルを175万人分、パクスロビドを250万人分、計425万人分追加注文したとしている。既に確保しているモルヌピラビル48万人分とパクスロビド25万人分を合わせれば、ほぼ500万人分に達する。
フランスはモルヌピラビル5万人分の注文を取り消し、効果がより優れているとされるパクスロビドを確保すると発表した。日本もモルヌピラビル160万人分を確保している状態で、追加でパクスロビド200万人分の供給契約を結び、来年中にできるだけ早く医療機関に供給する方針を明らかにした。カナダはパクスロビド100万人分、モルヌピラビル50万人分を入手することにした。その一方で韓国はパクスロビド7万人分、モルヌピラビル24万2000人分についてのみ、確実な導入契約を締結している。「新型コロナワクチン導入過程で対応が遅れ痛い目に遭ったのに、今回もまた同じ状況になるのではないか」と懸念する声が上がっている。
外信各社は「既に来年の経口薬の供給が需要に追いつかなくなっており、各地で混乱が生じる可能性がある」と警告している。カトリック大学医学科微生物学校室のペク・スンヨン名誉教授は「今はファイザーの経口薬の導入が重要だが、7万人はあまりにも少ない。しかも、それすら早く届く確率は低い」「ファイザーの生産能力にも限界があるので、米国や日本が先に入手すれば、韓国に入ってくるのはしばらく後になってからだろう」と語った。
ワシントン=イ・ミンソク特派員、東京=チェ・ウンギョン特派員、アン・ヨン記者