会社員のパク・ミンソンさん(27)は秋夕(チュソク=中秋節)連休に動画配信サービス大手「NETFLIX(ネットフリックス)」のオリジナルドラマ『イカゲーム』全9話を5時間で見た。本来、全編見るのには約8時間かかるが、再生速度を「1.25倍」に設定し、途中退屈なシーンが出てくるたびに「+10」(10秒早送り)ボタンを押したからだ。パクさんは「まわりの人たちがみんな『イカゲーム』の話をしているので、早く見ようというプレッシャーがすごくあった」「早送りしながら見たが、名シーンは全部見た」と言った。会社員のイさん(32)は動画投稿・共有サイト「ユーチューブ」で全6話の人気ドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』5時間分を40分の要約版で見た。イさんは「ドラマを見ていないと友達の会話に入りにくいので、要約版でだいたいの登場人物やあらすじだけは把握する」と言った。
若者たちの間で最近、ドラマ・映画など各種コンテンツを早送りなどで見る「早送り・要約版中毒」現象が顕著になっている。動画再生速度を1.25倍や1.5倍に速めたり、要約版でだいたいのストーリーを把握したりするというものだ。「ネットフリックス」「TVING(ティービング)」「ミリの書斎」のように、月額制で映画や書籍などのコンテンツを無制限で提供するサービス「サブスクリプション」が普及するにつれ、顕著になってきた現象だ。時間は限られているのに、見なければならない「無料コンテンツ」はたくさんあるためだ。
大学生の中には、事前収録された非対面型授業さえ1.5-2倍速で見る人々が多い。大学生のシン・ジョンインさん(23)は「1.75倍速で授業を聞く。一部は早送りをしながら見る」「最近は1倍速だと『スローモーション』のように感じられる」と言った。映像だけでなく、一部のポータルサイトやメディアでは、要約版を望む読者たちのために、インターネット記事の上部に「記事の要約」サービスも提供している。
専門家らは、こうした現象が「せっかち・短気」につながる可能性があると言う。2時間にわたって「1倍速」で進む映画やミュージカルさえ我慢できないという人々もいる。会社員のユさん(31)は「このあいだミュージカルを見に行ったが、登場人物同氏の会話が長く続くシーンで、いつの間にか右手の親指を動かしている自分自身にビックリした。ユーチューブを早送りで見るのがクセになっていたんだと思う」と語った。ソウル・江南で読書討論塾を経営しているイ・ハウン・センター長は「新型コロナで授業まで映像で行われていることから、『子どもの読解力が低下してしまうのでは』と心配する親からの問い合わせが多い」と語った。
カン・ウリャン記者、カン・ダウン記者