韓国政府緊急需給調整六日目…今も「尿素水求めて三万里」

　16日、京畿道平沢市内のあるガソリンスタンドでは、午前8時から車両用尿素水が入っているかを尋ねる電話がひっきりなしに鳴った。政府が尿素水を優先供給する「拠点ガソリンスタンド」に指定されたこのガソリンスタンドは午前中ずっとトラックが長蛇の列を成した。入ってきた3750リットルの尿素水は3時間でなくなった。このガソリンスタンドの経営者は「今日だけでトラック運転手たちから『尿素水はあるか』という電話が500本以上来た」と語った。

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　政府が尿素水販売先を全国100拠点のガソリンスタンドに集中させる「緊急需給調整措置」を下して六日たったが、トラック運転手たちは依然として「尿素不足」にあえいでいる。同日から午後2時と8時に拠点ガソリンスタンドごとの尿素水在庫現況を公開することになったが、リアルタイムの情報ではなく「2時間前」の情報だった。これを信じてガソリンスタンドに来て、無駄足となるケースが相次いだ。

　慶尚北道慶山市の拠点ガソリンスタンドでは、政府がガソリンスタンドごとの在庫量を書き出せと言った午前11時30分ごろ、既に供給量は尽きていた。保管タンクの底に少し残る程度の約243リットルがすべてだった。トラック7－8台にしか入れられない量だったが、在庫があるという通知を見たトラック数十台が集まった。ガソリンスタンド側は「無駄足を踏んだ運転手たち全員から連絡先を受け取り、『入荷されたらメッセージ・アプリで知らせる』と案内している」「2時間前の在庫情報提供で、かえって混乱が大きくなっている」と話した。

　今すぐにでも尿素水が必要なトラック運転手たちは、メッセージ・アプリ「カカオトーク」のオープンチャットルームを開設して、リアルタイム情報を交換するなどの自衛策を取っている。トラック運転手約1000人が入っているオープンチャットルーム「トラック尿素水情報交換」では、「蔚山から浦項方面で尿素水を求める」「華城－木浦方面の尿素水情報頼む」「○○ガソリンスタンドに来たが在庫がない」などの投稿が続々と寄せられていた。

　尿素水はトラックや建設重機だけでなく、消防車や救急車にも使われる。政府は消防車・救急車については今後3カ月間使用できる量を確保したと主張している。しかし、その後、追加供給が計画通りに行われなければ、すぐに救急患者を搬送できないという非常事態に陥る恐れがある。

　慌てた政府は、窮余の策として産業用尿素水を車両用に転換する実験も進めた。主に製鉄所で使う非車両用尿素を車両用尿素水に合うように試料2種類を作り、それぞれ排気量2500cc級のディーゼル・トラックに注入、走行時の排出ガスが汚染物質排出基準を満たしているか今月2日から11日間検討した。しかし、実験を進めた国立環境科学院は「今は使用が難しい」という結論を下した。産業用尿素水を車両用に転換する実験で、大気汚染物質規制基準は満たしたが、転換された尿素水を使用したときに発生する可能性のある環境的影響などが十分に検証されず、追加実験が必要だというのが理由だ。国立環境科学院は「一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)など転換尿素水がすべての大気汚染物質規制基準を満たすことが分かった」としながらも、「『今後の環境的影響と車両の窒素酸化物還元触媒装置に及ぼす安全性などを、追加実験を通じて明らかにする必要がある』という専門家たちの意見に従い、追加実験を進める」と明らかにした。ただし、「実際に使用するまでは追加実験や政策的事項などを総合的に検討する」というただし書きを付けており、尿素水不足を解消するのは当面、期待できない状況だ。

　政府は「現在、車両用尿素水の生産量が一日平均の国内消費量を上回っている」と慌てて火消しに出た。企画財政部は「現場点検過程で確認した車両用尿素700トンで、200万リットルの尿素水を生産しているところだ」として、17市・道のバス、清掃車などに供給した20万リットルが15日までに15市・道の需要先に配分された。残りの180万リットルも100余りのガソリンスタンドに供給中だとしている。また、ベトナムから車両用尿素水60万リットルを追加購入することを決めた。これは来年1月に国内に到着する予定だという。

　それでも政府発表を楽観的に受け止めてばかりはいられない、という意見もある。大林大学自動車学科のキム・ピルス教授は「今回の需給不足事態は完全な解決までに6カ月以上かかるものと思われる」「政府は『3カ月分確保した』などのようにその場しのぎ的な発表をするのではなく、第一線のガソリンスタンドの混乱を防げる具体的かつ実質的な指針を出すべきだ」と指摘した。韓国ガソリンスタンド協会は「いつごろ拠点ガソリンスタンドだけでなく市内のガソリンスタンドも尿素水の供給が円滑になるのか、ひたすら政府の発表だけを待っている」と言った。

キム・ドンヒョン記者