年末に予定されている国連総会で採択予定の北朝鮮人権決議案の草案に韓国軍捕虜に対する人権弾圧を懸念する内容が初めて記載された。国連の193加盟国全体の総意とされる文書に韓国軍捕虜に関する内容が反映された背景としては、この問題が韓国国内の一部人権団体の主張にとどまらず、国際社会全体の関心事として浮上したことが挙げられる。人権団体の転換期正義ワーキンググループのシン・フィソク法律分析官は7日「韓国軍捕虜問題の解決にあいまいな態度を取り続ける韓国政府に圧力を加える狙いが込められている」とコメントした。
国連総会で人権問題を取り扱う第3委員会が今月6日にウェブサイトを通じて公開した決議案の草案には「未送還の戦争捕虜(韓国軍捕虜)とその子孫に対する持続的な人権侵害に懸念を表明する」との文言が記載されている。今年3月の国連人権理事会でも同じ内容が記載された北朝鮮人権決議が採択された。ある外交筋は「同じ内容であっても人権に特化された人権理事会での採択と、国連加盟国全体の意向を反映した総会での採択では天地の隔たりだ」「韓国軍捕虜を巡る人権問題の深刻さに国際社会全体が注目し始めた」とコメントした。
1953年7月の停戦協定締結後も祖国に戻ることができない韓国軍捕虜は5万-6万人に達する。捕虜とその家族の多くは北朝鮮各地の鉱山で働かされ、強制労働は代を継いで続いているという。平安南道价川郡の朝陽炭鉱でこれらの実情を目撃したという脱北者の証言も今年6月に公開されている(本紙6月5日付)。
韓国国防部(省に相当)は韓国軍捕虜の正確な人数などは把握できておらず、現状では全員が戦死者として記録されている。1994年の故チョ・チャンホ少尉の帰還を皮切りに、2010年までに合計80人の元捕虜が韓国に戻ったが、そのほとんどが自力で脱出するか、あるいは人権団体の支援を受けていた。一方で韓国政府として北朝鮮に送還を求めたこともほとんどなく、国連などを通じて送還世論を高めるといった活動もほとんど行われてこなかった。
北朝鮮人権決議案の草案には捕虜問題のほかにも「国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が北朝鮮の現状について安保理でブリーフィングを行った内容を勧告する」「北朝鮮にいる国際犯罪容疑者の捜査・起訴を国連加盟国に勧告する」「北朝鮮政府に対して拷問や虐待の即時中断を求める」などの文言も初めて記載された。
今回の草案提出には欧州連合(EU)、日本、カナダなど35カ国が共同提案国となった。韓国は2008年から共同提案国に名を連ねていたが、19年以降は3年連続で加わっていない。韓国の保守系野党・国民の力の趙太庸(チョ・テヨン)議員ら野党議員12人は今月5日、国連総会で北朝鮮人権決議案の共同提案国に参加することを韓国政府に求める決議案を提出した。第3委員会で決議案を採決する前までは共同提案国として名乗りを上げることができる。
李竜洙(イ・ヨンス)記者