中国が史上最悪の電力難に見舞われ、中朝国境地域の夜景に逆転現象が起きた。米国の「自由アジア放送」(RFA)は最近、ツイッターにアップされた1本の動画を紹介。「中国の遼寧省丹東市は闇に包まれているのに、鴨緑江を渡った先の北朝鮮新義州市は五色の照明が明るく輝いている」とし「(最近の)中国(の電力事情)は北朝鮮にも劣るらしい」と伝えた。
新義州と丹東の夜景は一時、落ちぶれた北朝鮮経済を象徴する姿と見なされていた。世界のメディアは、中朝国境地域を取り上げる際には「不夜城の丹東と闇の中の新義州」に慣用句のごとく言及していたものだった。「夜も明るく輝く丹東がうらやましくて川を渡る決心をした」という脱北者の証言も盛んに出てきていた。
中朝国境地域で夜景の逆転が起きた理由は、中国が電気の使用を制限する「限電令」を下したからだ。オーストラリア産の石炭の輸入禁止などによる石炭不足、強力な炭素排出抑制政策、水力・風力による電力生産量の減少、新型コロナ後に急上昇した工場稼働率などで中国は深刻な電力難に陥った。
これに対し中国政府は9月11日に「エネルギー消費強度と総量の統制案」を発表し、各地方政府の電力使用コントロールの成果を評価すると表明した。この後、中国国内31の省・直轄市・自治区のうち22カ所で電力供給を制限した。一部の地方では電力を大きく消耗する工場の稼働率を90%まで落とし、工場の門を週に2日しか開けないところも続出した。
北朝鮮と国境を接している東北3省(遼寧・吉林・黒竜江省)の場合、発電量が電気使用量より多いにもかかわらず電気の供給を制限している。丹東市を含む遼寧省では、信号灯が点灯せず交通渋滞が発生したり、停電でマンションのエレベーターが動かなかったりといった事件が山ほどあるという。
中国政府が来年2月の北京冬季オリンピックを前に、「世界最大の炭素排出国」という汚名を返上するため、今後も引き続き限電令を維持することもあり得る-という見方も出ている。今年上半期現在で火力発電への依存度が73%にもなる状況では、電気の使用制限が炭素排出の削減に最も効果的だからだ。昨年、習近平国家主席は「2060年までにカーボンニュートラルを達成する」と公言した。RFAは「限電令は中国のような強圧的な体制でのみ可能なこと」と指摘した。