中国と対立してきたバルト三国のリトアニアに対して、中国政府は自国の大使を召還すると10日、明らかにした。中国はまた、リトアニア政府にも駐中国大使を呼び戻すよう要求した。このため、大使級の両国関係が代表処レベルに格下げされる、あるいは断交につながる可能性があるとの見方が出ている。
これは、中国外務省が10日、報道官名義で「リトアニアは台湾の代表処設立を許可し、中国の主権と領土保全を深刻に侵害した」とした上で、明らかにしたものだ。1991年に旧ソ連から独立したリトアニアは同年、中国と修好した。しかし、昨年10月に政権を取ったギタナス・ナウセダ政権は自由民主主義を強調し、台湾に貿易代表処を設置すると今年3月に発表した。台湾もリトアニアの首都ビリニュスに代表処を設置すると発表した。代表処設置は正式な修好ではないが、中国は「一つの中国」原則に基づき、外国が台湾と正式な関係を結ぶことに反対している。
リトアニアは今年5月には中国が主導する「17+1首脳会議」脱退も宣言した。中国と中東欧17カ国がインフラ投資・協力を話し合う経済協力の枠組みだ。また、7月には台湾に新型コロナワクチン2万回分を支援した。リトアニア議会は今年5月、中国・新疆ウイグル自治区の住民に対する中国政府の政策を「人種虐殺」に規定する決議案を可決した。
人口280万人と中国の500分の1に過ぎないリトアニアが、強力な反中路線を取っていることについて、ドイツ公営放送局「ドイチェ・ベレ」は「ロシアの脅威に絶えず悩まされているリトアニアとしては、有事の際に米国や欧州連合(EU)の助けなしに持ちこたえることが難しいから」と説明した。米国とEUの対中政策に協力する必要があるということだ。ソ連共産党の支配を受けて中国を統治している共産党に対する反感が強いという解釈もある。
中国外務省は同日、断交についてまでは言及していない。その代わり、「リトアニアが間違いを正し、実質的措置を取ることを促す」「間違った道をこれ以上、進むな」と警告した。台湾代表処設置計画を取り消せという意味だ。香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、リトアニア外交部は声明で、中国の措置について遺憾の意を表した上で、「一つの中国の原則を尊重する中で、台湾との互恵的な関係をしっかりと発展させる」と述べた。