20年前のことだ。いつものように朝刊を開いた瞬間、驚きを隠せなかった。金大中(キム・デジュン)大統領とプーチン大統領が韓ロ首脳会談でミサイル防衛を制限する「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」が戦略的な安定の基盤であり、これを保存・強化することに同意したというのだ。当時、国際社会で最も熱かった争点は、ABM条約を巡る米ロの角逐だった。米国は、北朝鮮など核拡散の脅威に直面し、ミサイル防衛(MD)を推進。アラスカに迎撃ミサイルを配備するため、ABM条約を廃棄しようとしていた。ロシアはこれに反対した。ところが同盟国の韓国が公にロシアの肩を持ったのだ。常識的に理解できなかった。それも金大統領が、新しく就任したブッシュ大統領との韓米首脳会談をわずか1週間後に控えてのことだった。
驚いたことに、当時韓国政府には、ノーベル賞を受賞した大物政治家である金大中大統領が国際舞台で駆け出しのブッシュ大統領と会談さえすれば全てのことが解決できる、という楽観的な雰囲気が漂っていた。金大統領はブッシュ大統領に太陽政策について説明し、特にクリントン前政権の対北政策を受け継ぐべきだと説得しようとした。チョ・ミョンロク軍総政治局長が訪米し、米朝間に署名された米朝共同コミュニケを基に米朝対話を進めるべきだと主張した。