弾劾訴追が発議された林成根(イム・ソングン)釜山高裁部長判事が昨年5月、法院行政処に辞表を出し、金命洙(キム・ミョンス)大法院長と面談したところ、「辞表を受理すれば、国会で弾劾論議ができなくなり、非難を受けかねない」として、辞表が受理されなかったという。メディアがそれを報じると、金大法院長は「弾劾問題で辞表を受理できないという趣旨の発言を行った事実はない」と主張した。それに対し、林部長判事が「大法院が事実と異なる発表をしたので、やむを得ず事実確認のために立場を表明する」と直ちに反論した。金大法院長と林判事は正反対の主張をしているが、金大法院長の態度がおかしい。記者の取材には明確に否定せず、3日の否定発表もしばらく時間が経過した後のことだった。その発表も広報官が記者の質問に個別に答える方式だった。
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金大法院長は憲政史上初となる一線判事弾劾が林判事を標的として進んでいるにもかかわらず、それには一言もない。大法院も「弾劾手続きについては、国会と憲法裁判所に権限があり、大法院の立場を表明するのは適切ではない」と逃げるのに必死だ。大法院長が判事の弾劾に沈黙する理由を推測するのは難しくない。弾劾のために林判事の辞表を受理しなかったのに、今になって判事の弾劾を問題にすれば自己矛盾に陥る。大法院長は政権が判事弾劾の口実としている「司法介入」の捜査に「積極的に協力する」として、関連資料を検察に丸ごと引き渡している。
民主党の林判事弾劾は、金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事が関与した世論操作事件「ドルイドキング事件」、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長懲戒事件、チョ・グク元法務部長官の事件などで裁判所が厳正な判決を下したことを受け、判事に「注意しろ」と警告を送ろうとするものだ。いわゆる司法介入事件ではいずれも無罪判決が出ており、弾劾理由自体が疑問視されていること、1年もたってから弾劾を行うこと、林判事が今月退任するのに無理に弾劾を進めること、民主党議員が弾劾文書も読まずに押印したことなどは弾劾が政治的なものであることを明確に示している。それを明らかに知っている大法院長が沈黙しているのは共犯だという意味だ。