尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長が職務停止を受け、法曹界と検察周辺からは「政権を狙ったさまざまな捜査が無力化されるのではないか」という懸念が強まっている。秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は複数の敏感な事件の捜査で尹総長の指揮権を剥奪したが、あらゆる事件で同じことはできなかった。検察幹部は「これまでは尹総長が持ちこたえていたから、政権の外圧を阻む役割を果たしてきた。もはや目の上のたんこぶ(尹総長)が職務停止で無力化され、権力への捜査に対する圧迫はさらに露骨なものになる」との見方を示した。
秋長官による24日の電撃的な尹総長懲戒請求と職務停止命令は、大田地検が今月5日、月城原子力発電所1号機の経済性評価ねつ造疑惑に関連し、産業通商資源部と韓国水力原子力などを家宅捜索してから19日後のことだった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の腹心、尹建永(ユン・ゴンヨン)国会議員が原発関連の捜査について、「警告する。一線を越えるな」と述べるほど、最近与党内では検察の捜査のメスが青瓦台にまで伸びることを極度に警戒する様子が見られた。民主党の梁李媛瑛(ヤンイ・ウォンヨン)議員は原発の早期閉鎖を大統領による「統治行為」とまで述べた。
実際に大田地検は近く、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業通商資源部長官と蔡熙峯(チェ・ヒボン)元青瓦台産業政策秘書官に出頭を求めて聴取し、原発早期閉鎖の過程に違法性があるかどうかとそれに対する青瓦台の介入疑惑を捜査する予定だった。このため、検察内部からは「既に数回『政権捜査チーム』を空中分解させた秋長官が大田地検の捜査班を吹っ飛ばすのではないか」との見方が示されていた。秋長官はそこから一歩踏み込み、尹総長の職務を停止してしまった。
複数の政権関係者が関与した疑惑が持たれるライム資産運用とオプティマスファンドの事件も同様だ。秋長官はライム事件の指揮から尹総長を排除し、尹総長が捜査過程に不適切に介入したという疑惑について、監察を指示した状況だ。ライム事件では民主党の奇東旻(キ・ドンミン)議員と比例代表選出の李秀真(イ・スジン)議員、青瓦台の姜琪正(カン・ギジョン)元政務首席秘書官、金栄春(キム・ヨンチュン)国会事務総長らが違法な政治資金を授受したとして捜査線に浮上している。また、ロビー疑惑も中心人物のキム・ボンヒョン氏が「野党ロビー」「検事接待」を主張すると、秋長官はそれを鵜呑みにして、尹総長に対する監察を指示し、それ以降与党に対する捜査は空転している。