【新刊】中島岳志著、パク・チェイ訳『日本の明日』(思考の力刊)
浮沈を繰り返してきた韓日両国の関係において、政治リーダーシップの役割は絶対的だ。日本に韓流ブームを引き起こした1998年の「日韓共同宣言 21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」は、金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相でなければ不可能だったかもしれない。最悪の状態に至った今の韓日関係の突破口も、新たなリーダーシップから探るべきではないだろうか。そうした意味で、「安倍後」の「日本の明日」を引っ張る首相候補グループの政治哲学を紹介した本書は韓国読者の関心を引き付けるに十分だ。
少壮政治学者の著者は、安倍首相をはじめ石破茂、菅義偉、野田聖子、河野太郎、岸田文雄、加藤勝信、小渕優子、小泉進次郎の計9人を分析対象としている。政治工学的分析よりも、政治家のビジョンと政策を把握するため著書を中心にアプローチした点が目に留まる。
安倍首相を理解しようと思ったら、自民党が野党に転落した1993年に彼が政治に入門したという事実に注目しなければならない、と著者は語る。安倍は、政権を奪われた自民党に必要なのは「きちんとした保守」の再建だと信じ、これを自分の第一の使命にした。「論破」という単語も好んで使うが、これは妥協よりも論争を繰り広げて相手を打ち砕きたがる性向が反映された単語選択だ。日本人の間で安倍は信義がなく、その都度その都度、状況を切り抜けている人物と思われている。著者は、母方の祖父・岸信介のせいだとみている。岸は日米安保条約改正に反対の大野伴睦を懐柔するため、次期首相の椅子を約束したが、条約改正後は約束を守らなかった。批判が起こると、岸は「国のためうその約束をした」と弁明した。安倍は著書『「保守革命」宣言』で、祖父の選択が「動機倫理」では問題があるが「責任倫理」では立派だったと弁護した。「政治家は結果に責任を負うことで免罪符を受けられる」というわけだが、韓国人としては警戒しないわけにはいかなくなる発言だ。