脱北者の保護を命じたのに…警察官が脱北女性に1年9カ月性的暴行

 脱北者の保護を担当していた現職の警察官が脱北女性に1年9カ月にわたって性的暴行を加えた疑いで検察の捜査を受けている。問題の警察官は職務を誠実に遂行したとして、政府の表彰まで受けていた。その上、問題の警察官の上司は「死線を乗り越えてやって来た大韓民国で後悔なく暮らすためには忘れるべきだ」と語り、脱北女性の訴えを黙殺していた。

 被害者側のチョン・スミ、ヤン・テジョン両弁護士が28日、ソウル中央地検に提出した告訴状によると、ソウル瑞草署保安係に勤務していたA警衛(警部補に相当)は2016年5月から18年2月まで12回以上、被害者に性的暴行を加えていたという。A警衛はまた、被害者から500万ウォン(約43万9000円)相当の高級時計を脅し取っていた。

 A警衛は瑞草署保安係から捜査課経済チームに異動したが、今回の事件が発覚したために6月に待機を命じられた。瑞草署は独自に監査を進めてきたとされるが、今回の告訴を受け、検察が直接捜査を開始した。A警衛は2010年から18年まで脱北者の身辺保護を担当していた。職務能力が優れているという理由で、16年には大統領直属の国民大統合委員会から「英雄牌」という盾を受け取った。被害者側の弁護人は「A警衛は北朝鮮情報の収集などを理由に被害者に接近し、16年に被害者宅で性的暴行に及び始めた」と指摘した。

 検察による捜査はA警衛にとどまらず、その上司に拡大する可能性がある。被害者は18年3月、A警衛の上司である瑞草署のB警監(警部に相当、現保安係長)に、同年8月と9月には当時の瑞草署経済チーム長、瑞草署身辺保護担当官にも助けを求めたが黙殺されたと主張している。当時B警監は「正式に告訴状を提出するか、忘れてしまうのがよい。時間が解決する」と述べたという。今年2月に地方の派出所長に異動となったB警監は本紙の電話取材に対し、「以前のことなのでよく覚えていない」と話した。

 被害者は瑞草署の独自監査もまともに行われなかったと主張した。今年1月に被害者が瑞草署の弔問監査官と会って被害について相談したが、瑞草署は「陳情書を受け取っておらず、監査を実施できない」として監査を回避したという。今年6月13日に被害者が弁護士を選任し、法的対応に乗り出すと、瑞草署はA警衛に待機を命じて監察を開始したが、被害者側は「警察の捜査は信用できない」として、検察に直接捜査を求めた。

アン・ビョル記者
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