数日間、きつい暴言で脅しをかけてきた北朝鮮が南北連絡事務所を吹っ飛ばしてしまった。金与正(キム・ヨジョン)は文在寅(ムン・ジェイン)大統領に向かって「偉そうなふり、正義感の強いふり、平和の使徒のように振る舞うのがおぞましく、不格好だ」と言葉の爆弾まで落とした。このような屈辱を受けなければならないとは、文政権の対北朝鮮政策にどのような問題点があったというのだろうか。何かが食い違い、何かが起こっているのは明らかだ。しかし、その主語が対北朝鮮政策なのかは疑問だ。対北朝鮮政策は大韓民国の国益のため北朝鮮の変化を誘導するものだ。北朝鮮を動かすためにムチを手にすれば北朝鮮に対する圧力政策、ニンジンを与えれば北朝鮮に対する包容政策と言われる。ところが、文政権は北朝鮮を変えようとしたことがない。
大韓民国の対北朝鮮政策の最優先課題は北朝鮮の核廃棄だが、文政権ではその単語自体が消えてしまった。北朝鮮がアレルギー反応を起こすからだ。代わりに非核化という言葉を使っている。どちらでも同じではないかと思うかもしれないが、全く違う。北朝鮮が言う非核化は、韓半島(朝鮮半島)の非核化だ。核戦力を備えた在韓米軍が韓半島から離れることが最初のボタンであり、前提条件である。だが、その非核化という言葉すら口にできなくなった。昨年末、国連駐在の北朝鮮大使が「非核化は交渉のテーブルから降ろされた」と言ったと思ったら、その数日前に北朝鮮外務省の局長が「非核化という出まかせは放り出せ」と言っていた。
対北朝鮮政策では、北朝鮮の人権問題も忘れてはならない。文政権に入って北朝鮮人権財団は閉鎖され、北朝鮮の人権国際協力大使は空席状態だ。対北朝鮮人権団体への支援は削減されたり、打ち切られたりした。国連の北朝鮮人権決議に共同提案国として参加してきた慣例も11年ぶりに破られた。韓国外交部長官は「北朝鮮との非核化交渉において、人権は優先順位にない」と弁明した。文政権が北朝鮮に非核化を強く要求したことがあっただろうか。