【独自】6・25戦争拉致被害者らの子孫、金正恩を相手取り初の損害賠償訴訟

 6・25戦争(朝鮮戦争)での北朝鮮による拉致被害者家族は18日、北朝鮮と最高責任者である金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を相手取り、損害賠償訴訟を起こす方針を明らかにした。それに続き、「韓半島の人権と統一のための弁護士会(韓弁)」は6・25戦争勃発から70周年となる今月25日、家族らの代理でソウル中央地裁に提訴することを決めた。今後は「被告金正恩」に対する裁判が開かれることになる。拉致被害者家族が金正恩氏を相手に損害賠償訴訟を起こすのは初めてだ。

 6・25戦争拉北人士家族協議会などによると、戦時中に拉致された韓国国民は約10万人と推定される。国連北朝鮮人権調査委員会(COI)は2014年の報告書で拉致被害者が「さまざまな非人道的・侮蔑的待遇と共に、敵対階層分類による差別を長年受け、北朝鮮国外の家族も真実を知る権利などで深刻な人権侵害を長期間受けてきた」と指摘している。

 韓弁は昨年末から拉致被害者の子孫を訪ねて面談を行い、訴訟参加を呼び掛けた。韓国法曹界で「第1号弁護士」として知られた洪在祺(ホン・ジェギ)弁護士(1950年拉致)、20世紀の代表的国学者で民族詩人だった鄭寅普(チョン・インボ)先生、1936年のベルリン五輪マラソンで孫基禎(ソン・ギジョン)選手の優勝を報じた際、日章旗を削除した李吉用(イ・ギルヨン)元東亜日報記者の子孫などが原告として加わった。鄭寅普先生の息子、鄭良謨(チョン・ヤンモ)元国立中央博物館長(85)は本紙取材に対し、「韓国政府が北朝鮮による拉致被害を調査しておきながら、北朝鮮にまともな補償要求を一度も行ってこなかった。民間団体が乗り出すというので喜んで参加することになった」と話した。

 今回の訴訟は北朝鮮政府とその最高責任者である金正恩氏を被告人とする民事訴訟だ。法曹界では珍しいケースとして記録されることになりそうだ。昨年には6・25戦争当時、北朝鮮で強制労働させられ、脱北した元国軍捕虜2人が金正恩氏を相手取り、未払い賃金と慰謝料として、1人当たり1億6000万ウォン(約1400万円)を賠償するよう求める訴えを起こし、7月7日の判決を控えている。

 韓弁の金泰勲(キム・テフン)代表は「今回の訴訟で損害賠償判決を勝ち取り、『ワームビア式賠償請求』に取り組む」と説明した。2015年に北朝鮮に抑留され、2年後に昏睡状態で送還された直後に死亡した米大学生、オットー・ワームビア氏の両親は米国の裁判所の賠償判決を根拠として、金正恩氏の隠し財産を追跡してきた。

キム・ウンジュン記者
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