日本政府が北朝鮮の弾道ミサイルを防ぐ目的で推進した陸上ミサイル防衛システム「Aegis Ashore」(イージス・アショア)だが、配備計画停止決定をめぐり波紋が広がっている。自民党内でも、「日本の防衛が後退している」という指摘が出ている。特に、16日の北朝鮮による南北連絡事務所爆破などで北朝鮮が挑発行動をとる可能性が高まっている状況とも相まって、議論が広がってきている。
安倍内閣は2017年、北朝鮮の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)級ミサイル発射で緊張が高まったことから、イージス・アショア導入を決定した。山口県と秋田県に配備し、2023年から運用するという計画だった。米国が開発したイージス・アショアは、海上のイージス艦ミサイル迎撃システムを地上に適用したもので、現在、米軍がヨーロッパに実戦配備・運用している。
河野太郎防衛相は15日、約5000億円がかかることが予想されるイージス・アショア配備計画停止を突然発表した。迎撃ミサイル発射時に分離されるブースターを安全な場所に確実に落下させることができないという技術上の問題と、高額の費用のために合理的ではないという理由からだった。
これを受けて、自民党内でも問題提起が相次いでいる。2017年12月、イージス・アショア配備を決定する時に防衛相だった小野寺五典・自民党安全保障調査会長は「北朝鮮の脅威は変わっておらず、日本の防衛は後退する」と直接的に批判した。16日に急きょ開かれた自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議でも、今回の決定に対する批判が相次いだ。安倍内閣はこれまで、イージス・アショアを8隻のイージス艦と共に日本のミサイル防衛の要になると強調してきたが、こうした計画そのものが揺らいでいるということだ。
今回の決定は日米同盟に悪影響を及ぼすという懸念も出ている。米国が今回の配備計画停止による違約金を要求したり、在日米軍分担金交渉で日本に巨額の負担金を要求したりする可能性も取りざたされている。
今回の配備計画停止が河野防衛相の独断によるものだという見方もある。毎日新聞は17日、今回の事案は河野防衛相の独走によるものだとして、河野氏が今月4日と12日の2回、安倍首相に会って談判した後、配備計画停止を確定した、と報道した。同紙は、重要な事案が政権内部で十分に協議されていないのは安倍政権が混乱した状況に置かれていることを示している、と指摘した。