韓国政府が、東海上で北方限界線(NLL)を越えてきた北朝鮮の船員二人を、板門店を通して北朝鮮へ追放したと発表した。二人はイカ漁船で同僚乗組員16人を殺害してNLLを越えた後、亡命の意思を韓国側に表明したにもかかわらず、韓国政府は追放したという。当初殺人犯は3人いたが、1人は船が北朝鮮の金策港へ戻った際に降りたという。前例のない事件の内容から見て、韓国政府は直ちに国民へ知らせるべきだった。しかし北の船員を送還した事実は、7日に国会へ出席した大統領府(青瓦台)関係者の携帯電話メールに記された送還計画が、メディアのカメラにキャッチされたことで公になった。
野党議員らは統一部(省に相当)長官に対し、状況把握のため「すぐに送還を止めろ」と要求したが、その時既に追放は終わった状態だった。韓国政府は、北朝鮮の船員らは殺人犯であって、法律上の保護対象ではないので送り返したと理由を明かした。「送還が終わり次第公開する計画」だとした。しかし、事件の疑問点は一つや二つではない。何かに追われるように急いで二人を送還した理由は納得し難い。韓国政府は、6月に北の木船が「海上ノック」亡命した際も「4人のうち2人は北へ戻す」と発表し、それからわずか1日で送還手続きを済ませた。
青瓦台関係者の携帯電話メールには「今回の送還に関連して国情院(国家情報院。韓国の情報機関)と統一部間の立場の整理がなされず、追加検討が予定されている」という記述も含まれている。二つの政府機関のうち一方は、船員を急いで北へ送り返すのに反対したということで、そこにはそれだけの理由があったのだろう。北が要求する前に韓国側が先に送還を打診したというのも、類例を見いだし難い。北の住民が下ってきたら、また軍事作戦でもするかのように送還しようとするだろう。北に対するご機嫌うかがいは度を越している。