史上初の板門店での米朝首脳会談で「脇役」に徹した文大統領

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は30日、米国のトランプ大統領と首脳会談を行い、その後共に南北軍事境界線のある板門店を訪れた。板門店では、平壌から来訪した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長、トランプ大統領と3人で8分ほど言葉を交わした。しかしトランプ大統領が米国の現職大統領として初めて北朝鮮の地を踏むときは、一歩退いて様子を見守った。本格的な非核化交渉はトランプ大統領と金委員長の2人で行われた。板門店の韓国側施設「自由の家」で、トランプ大統領と金委員長が53分間にわたり会談した際、文大統領は別の部屋で待機していた。

 今回板門店で行われた米朝首脳会談での文大統領の役割をめぐっては、評価が分かれている。一部では「トランプ大統領を粘り強く説得し、ハノイでの会談失敗以降全く進展のなかった米朝非核化交渉を再開させるきっかけをつくった」と肯定的な評価が聞かれる。一方で「韓国の地で世界的な外交イベントが開催されたのに、肝心のわが大統領は周囲で見ているだけだった」と残念がる声もある。「文大統領が、非核化交渉の主導権を握っている米朝の間で実質的な進展を引き出すのであれば、結果的に今日の『助演』が主演2人より輝きを放つだろう」という指摘も出ている。

 文大統領は韓米首脳会談の後の共同記者会見で、今日の板門店での会合の当事者は米国と北朝鮮になるだろうと述べていた。文大統領は「私も今日、板門店に招待されている。しかし、今日の中心は北朝鮮と米国間の対話だ」と明らかにした。また、南北対話の可能性に関しては「今日は朝・米間の対話に集中するようにし、南北間の対話は次の機会に計画されるだろう」と述べた。この日の板門店での会合は米朝間の非核化交渉再開に向けたものであり、南・北・米3か国あるいは南北間の対話のための場ではないと言ったわけだ。

 実際に文大統領はこの日、米朝首脳の対話の仲介役に徹している様子だった。午後3時46分にトランプ大統領が板門店の軍事境界線を越えて北朝鮮の地を踏んだ瞬間、文大統領は少し離れた場所から様子を見守った。トランプ大統領と金正恩委員長は、軍事境界線を北へ南へと行き来する「越境イベント」を繰り広げた。文大統領は、このイベントが終わった午後3時50分、自由の家の入り口前で2人とあいさつを交わし、共に写真撮影に応じた。3人の真ん中に立ったのは金委員長だった。

 文大統領はトランプ大統領、金委員長と共にしばらく言葉を交わした後、一緒に自由の家に入った。このため一部では、南・北・米の3首脳による会談が実現するのではないかとの期待感も生まれた。しかししばらくすると、米国の星条旗と北朝鮮の人共旗だけが交互に掲げられた会談会場が生中継の画面に映し出された。そこに韓国の太極旗はなかった。トランプ大統領と金委員長が午後3時59分から自由の家の2階会議室で会談した際、文大統領は同じ建物の別のスペースで待機した。

 文大統領は4時54分、会談を終えて北朝鮮側に戻る金正恩委員長をトランプ大統領と共に見送った。この時はトランプ大統領が3人の真ん中に立った。自由の家を出て軍事境界線に向かう時には、金委員長が文大統領に話し掛ける様子がカメラに捉えられた。金委員長は北朝鮮に戻る直前にトランプ大統領と握手し、文大統領とは抱き合った。

【写真】板門店の軍事境界線で対面した米朝首脳

パク・チョンヨプ記者
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