アサガオ、オシロイバナ、ツキミソウは、その名だけでも深い情がある。先祖代々ずっと、故郷の家路の曲がり角で息衝いていたかのようだ。しかし、それは錯覚。いずれもインド、中米、南米が原産地の花だ。野辺でよく見かけるヒメジョオンやシロツメクサ、都市部ではありふれた存在のセイヨウタンポポも外来種だ。こうした「帰化植物」が韓国には400種類以上もある。木の「国籍」を質して何になるのか。生態系に問題を起こすことなくきちんと調和して生きているのであれば、それは韓国の花だ。
にもかかわらず、植物の「国籍」論争がしばしば繰り広げられている。サクラがその代表例だ。サクラは日本の「国の花」だという認識があるせいで、昌慶宮にあったサクラの木は大挙して伐り倒されたり、移植されたりした。しかし日本に「国の花」はなく、強いて挙げるなら皇室の象徴たるキクの花だという。今考えてみると、あきれてしまう。韓日の植物学者らは過去数十年間、ソメイヨシノの原産地をめぐって論争を繰り広げてきた。論争はあっけなく終わった。国立樹木院が韓日のソメイヨシノの遺伝子全体(ゲノム)を解析してみた結果、「2つの木の種類はそもそも違う」という事実が昨年明らかになった。
すると今度はイブキの木が論争に巻き込まれた。済州道議会が6月3日、「日帝植民残滓(ざんし)清算条例案」を立法予告した。済州教育庁(教育委員会に相当)は「校内に植えられた『カイヅカイブキ』は日帝残滓」「条例案が通過したら切り倒す」という。このイブキの木を校木に指定している小・中・高校は済州島内に計21校ある。校庭のイブキ2157本が無慈悲に切り倒されそうな様相だ。大統領が親日清算を要求するせいで道路名、校歌まで変え、今度は植物まで攻撃している。