韓国小学校教科書から消えた「漢江の奇跡」

1980年代までの経済発展のシンボル

改訂された6年生の社会科教科書から消える

 今年3月から全国の小学6年生は3年ぶりに改訂された社会科の教科書で授業を受けている。ところがこの教科書には1960-80年代の韓国の経済成長を意味する「漢江の奇跡」という言葉がない。以前の教科書には経済開発5カ年計画の成果として紹介されていた。

 韓国教育課程学会の会長を務める高麗大学の洪厚祚(ホン・フジョ)教授は24日「海外では漢江の奇跡をうらやんでいるが、韓国の教科書ではなぜこれを隠そうとするのか理解できない」と述べた。洪教授はこの日、ソウル市中区のプレスセンターで開催された「公教育と国民形成」をテーマとした討論会で、今年から変更された小学校の社会科教科書を以前のものと比較した。社会科は国定教科書を使用している。

 韓国の現代史を取り扱う小学校6年生の社会科教科書は、昨年一部改訂された際にも大きな問題となった。「大韓民国樹立」という表現が「大韓民国政府樹立」に変更されたのだが、これが「大韓民国の正当性を否定する」という批判を受けたのだ。

 全面改訂される以前の教科書は韓国の経済発展を取り上げる際「この期間(産業化の期間)に経済が急速に成長した韓国は、世界の多くの国から漢江の奇跡を成し遂げた国と言われた(140ページ)」と説明している。「漢江の奇跡」については「韓国の輝かしい経済発展をドイツのライン川の奇跡に例えて作られた言葉」と記載されていた。しかし今年から変更された教科書からはこの部分が全て抜け落ちた。

 さらに「1948年の国連総会で大韓民国政府は韓半島(朝鮮半島)における唯一の合法政府として承認された(118ページ)」との記述もなくなった。一方で民主化の過程についての説明は12ページから24ページへと2倍に増え、「キャンドル集会」について紹介する項目も新たに設けられた。

 討論会で洪教授は「(変更された)教科書は大韓民国における自由民主政治の歴史を否定し、左翼的な思考に傾倒している」と指摘した。討論会に出席した別の専門家たちも新しい教科書を批判した。ソウル大学法学部のチェ・テグォン名誉教授(憲法学)は「国連は大韓民国を韓半島で唯一の合法政府として認めたが、これは憲法的に見ても重要な事実だ」「これに全く言及しないのは問題だ」と指摘した。

クォン・スンワン記者
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