ルノーサムスン釜山工場の労働者の時給が、全世界のルノー工場46か所のうち3番目に高い水準まで上昇している上、労働組合によるストが頻発し、親企業であるフランスのルノーグループから生産割り当てを停止される懸念が高まっている。ルノーサムスンはルノーグループから「日産ローグ」の生産を委託されているが、この委託生産の契約が今年9月で終了する。その後、生産割り当てがなければ、ルノーサムスンの工場稼働率は40%まで低下し、大規模なリストラや協力会社の連鎖倒産など「第2の韓国GM」の事態を招きかねない。
ルノーサムスンの労組は賃上げを要求し、過去4か月間で30回もの部分ストを実施した上、全面ストも予告している。ルノーグループ本社は今月1日「ストが続くなら新車の委託生産を停止する」と警告したが、ルノーサムスン労組のパク・チョンギュ委員長は8日「全面ストも辞さない」と真っ向から対決する姿勢を見せた。
■スペインより1.7倍も高い韓国ルノーサムスンの賃金
ルノーサムスンの関係者は10日、釜山工場の時給について「世界中のルノーの工場で釜山工場より人件費の高い所は、先進国フランスの工場(全5か所)のうち2か所だけ」と話した。スペインの工場は、釜山工場の人件費の60%で稼働できるのだ。トルコ工場に至っては、賃金は釜山の30%水準にすぎない。2013年に日産ローグの生産割り当てをめぐって競合した日本の九州工場と比べても、釜山のほうが20%も高いのだ。
2011-12年に新車開発の遅れによって4000億ウォン(現在のレートで約400億円)の累積赤字を計上していたルノーサムスンにとって、日産ローグは救世主となった。13年、釜山工場は九州工場よりも品質管理能力でやや劣っていたものの、人件費が20-30%低かったため生産割り当てを確保することができた。当初は年間8万台の生産という約束だったが、労使が努力を重ねて品質改善にも成功し、11万-13万台まで受注を伸ばすことができた。釜山工場の全生産台数の半数をローグが占め、16-17年にはルノーサムスンは4000億ウォン台の利益を計上することができた。しかし、5年の間に状況は逆転した。最近4年間で釜山工場は毎年2-3%の賃上げが行われたが、日本は1%以下で賃金は事実上据え置かれた。円安、アウトソーシングの拡大、高い給料をもらっていた戦後世代の退職などにより、九州工場の人件費はどんどん低下した。2009年に閉鎖の危機に直面していたスペイン・バリャドリッドのルノー工場は2010年に賃金を凍結し、その後も賃金上昇率を物価上昇率の半分程度に抑えるなど自主的な改革を行った。
ルノーサムスンも17年までの3年間は労使の賃金交渉が平穏にまとまり、韓国の自動車業界では労使関係の模範的モデルといわれていたが、昨年11月に労組委員長に強硬派の人物が当選したことで状況は一変した。労組はルノーサムスンの平均年俸6800万ウォン(約680万円、2017年基準)が現代自の9000万ウォン(約900万円)より低いとして、基本給の引き上げなどを要求している。業界関係者は「ルノーサムスンで勤続8年の社員の年俸は6000万ウォン(約600万円)程度で、釜山工場の平均年齢は38歳。平均年齢が50歳以上の現代自と比べるのは無理がある」と話した。