記者は今月18日、韓国西岸の全羅北道群山市にあるセマングム産業団地を訪れた。海岸線に銀色の鉄塔が立つ工場の外壁には「TORAY東レ先端素材」との文字が際立っていた。
東レは2016年7月、3000億ウォン(約293億円)を投資し、自動車の軽量化素材などに使われるポリフェニレンサルファイド(PPS)の生産工場を建設した。セマングム産業団地で最初の外資系企業だ。東レは先月、ここに1000億ウォンを追加投資し、工場の第2期拡張を進める計画を決定した。それだけではない。李泳官(イ・ヨングァン)韓国東レ会長は昨年、炭素繊維、エンジニアリングプラスチック(耐久性が高い特殊なプラスチック)、2次電池素材などの分野に2020年までに計1兆ウォンを投資すると表明した。
製造業の「韓国離れ」が相次ぐ中、日本の代表的なメーカーである東レは韓国への投資を強化している。1963年に韓国ナイロンにナイロン生産技術を供与したことがきっかけとなった東レと韓国の縁が55年間も続いている理由を探った。
■韓国製造業の生態系を信頼
2010年4月、東レグループは韓国子会社の東レ先端素材に炭素繊維の重要技術を移転し、韓国で生産を行う計画を発表した。韓国で炭素繊維が本格的に量産される以前のことだった。当時日本では技術流出に対する懸念が大きかった。東レグループは「韓国には炭素繊維を使って生産する自動車、船舶などの分野で世界的企業があり、戦略的に重要だ」として、計画を推進した。現在東レは慶尚北道亀尾工場で炭素繊維を年4700トン生産している。韓国国内で最大規模だ。
東レが韓国投資を続けてきた背景には、東レの納品先である韓国メーカーの競争力も一役買った。東レは亀尾と群山で炭素繊維、2次電池分離膜、不織布などを生産する。これら製品はサムスン、現代自動車、SK、LGなどに供給される。韓国東レ関係者は「韓国には世界トップクラスの企業が多く、大口の取引先を確保する上で有利であり、技術トレンドの変化にも迅速に対応できる」と説明した。