ソウル市内のあるゲームセンターが廃業するという知らせは、ニュース速報のように急速に広まった。あるプロゲーマーは自身のツイッターに「韓国のゲームセンターは今や終わった」と書き込んだ。「最後の姿を見守りたい」と、このゲームセンターの取り壊し現場にかつての常連客たちが行列した。9日、ソウル市永登浦区大林洞にあるゲームセンター「グリーン・ゲームランド」の完全閉店後に繰り広げられた光景だ。
同店は1998年にオープンした。ゲーム機が約30台という、それほど大きくないゲームセンターだが、「アーケードゲーム(ゲームセンター専用として設置されるゲーム)の聖地」と呼ばれた。特に、対戦格闘ゲーム「鉄拳」の達人たちは皆、ここに集まるといううわさがあった。
韓国大会の予選が行われ、観客も大勢集まった。うわさを聞いてやって来る海外のゲーマーもいた。このゲームセンターの常連客の中からは世界大会で優勝するプロゲーマーや、プロのゲーム解説者も多数現れた。
11日午後、このゲームセンターを訪れたところ、取り壊し作業の最中だった。土ぼこりをくぐって成人男性約20人が店内に入っていった。かつての常連客たちだ。このゲームセンターを20年間経営したユン・ギョンシクさん(65)、オム・ガプスン(64)さん夫婦が彼らを迎えた。常連客たちが「本当に残念だ」と言うと、オムさんは涙をぬぐった。20-30代の男性たちも一緒に泣いた。
ユンさん夫婦は「地方から来たお客さんとゲームセンターの片隅の部屋で一緒に寝たり、一緒にご飯を食べたりしたことも思い出だ」と言った。ユンさんはお客さんのリクエストで自らジョイスティック(ゲーム操作装置)を作ったこともあった。性能が良いとのうわさが広がり、海外から購入の問い合わせも来た。店が休みでお客さんがガッカリしないように、オムさんが母親を亡くして休んだ三日間を除き、20年間毎日営業した。
ユンさんは「インターネット・カフェやモバイルのオンラインゲームが人気を呼び、客がかなり減った」と言った。100ウォン(約10円)だったゲーム代は400ウォン(約40円)に引き上げたが、1台当たり1000万ウォン(約100万円)を超える機械代や数百万ウォン(数十万円)するアップデート費用の工面は難しかった。ユンさん夫婦は「ゲームセンターで思い出を作った数百人との縁が切れてしまうようで、気持ちの整理が付くのには多くの時間が必要そうだ」と語った。