【萬物相】台本通りに「庶民」と乾杯した文大統領

【萬物相】台本通りに「庶民」と乾杯した文大統領

 2016年4月に中国の李克強・首相が庶民生活の実態と物価を把握するという名目で四川省のある市場を訪れた。李首相が精肉店で店の主人に「商売はうまくいっているか」と尋ねたところ「普段は調子が良いが今日は全く売れない」という答えが返ってきた。首相を警護するため一般の客が市場に入れないのがその理由だそうだ。李首相が「それなら私が買おう」というと、この店の主人は「売ることができない」と言った。その理由は「警護の担当者が(肉を切る)包丁を全部取り上げたからだ」と訴えた。李首相が次に訪れた果物屋ではサクランボが1キロ3人民元(約50円)と書かれていた。実際は30元(約500円)だったが、店員を装った公務員が0(ゼロ)を1つ消したのだ。このような視察ショーの実態はネットを通じて国民に知られるようになった。

 韓国でも1980年代までは同じようなことが行われていた。かつて全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の警護員だったというある人物は「市場や農家を視察する際には大統領が質問する相手はもちろん、質問の内容も決まっていた」と語る。国家安全企画部(現在の国家情報院)の職員が通行人などを装い、大統領が何かを言うと拍手をするといったシナリオも決まっていたという。ただし2000年代に入ると警護室の仕事は大統領の動線を事前にチェックする程度になったようだ。

 前回の米国大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントン候補はあるトークショーに出演した際、12歳だったときの写真がスクリーンに映し出されると、非常に驚いてとまどったような素振りを見せた。しかし実は放映に先立ち全てのシナリオはもちろん質問などは事前に決められていて、その答えも準備されていたことが後からわかった。映画俳優だった故レーガン元大統領も「政治はショービジネスのようなものだ」と語ったことがある。

アン・ヨンヒョン論説委員
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】台本通りに「庶民」と乾杯した文大統領

right

あわせて読みたい