2年前にエネルギーと気候変化に関する「ウィキッド・プロブレム」という本を書いた。「ウィキッド(wicked)」とは「邪悪だ」「意地悪だ」といった意味を含む。その年の1月、世界各地を覆った寒波が良い例だ。韓国では寒波警報が発表され、亜熱帯の中国・広州で雪が降り、米国では「スノーマゲドン」という新語まで誕生した。当時の寒波は北極が温暖化したために北半球のジェット気流が蛇行し、冷たい空気が中緯度まで南下したことが原因だった。温暖化が寒波を呼んだのだ。
欧州と米国が温暖化を阻止しようとパーム油やトウモロコシ起源のエタノールを燃料として使う「バイオエネルギー」を奨励したことがかえって温暖化を加速させた。密林を伐採し、パームヤシのプランテーションを行ったり、トウモロコシからエタノールを精製する過程で多量の温室効果ガスが排出されていることが分かった。これもまた「ウィキッド」な結果だった。
慶尚北道の太陽光発電団地が土砂崩れで崩壊した写真が新聞に報じられた。山の斜面を削り、樹木を伐採し、太陽電池パネルを設置したが、台風による大雨で地盤が崩壊した。環境保護のために太陽光を推奨したが、環境を破壊する結果を招いた。最近の貯水池や湖に設置される水上太陽光発電所も台風の直撃を受ければ、持ちこたえられるかどうか心配だ。
2015年8月、慶州市に放射性廃棄物の貯蔵施設第1期が完成した際、責任者が「世界的に最先端の安全な施設だ」と自慢したのに対し、苦笑が漏れた。貯蔵施設に保管する中レベル、低レベルの放射性廃棄物はそれほど危険な物質ではない。それを6000億ウォン(約590億円)をかけ、長さ4キロメートルの洞窟を掘り、地下に保管すること自体が過剰だ。地下水脈が分断され、地下水が貯蔵施設にしみ出し、危険な状況を招いてしまった。初めから地表で処理を行い、目に見える形で管理していたならば、はるかに安全だったはずだ。安全を掲げる脱原発政策もそうだ。技術人材の育成が絶たれ、かえって既存の原発の安全性を損ねているとの指摘が多い。
政策が当初の目標とは反対の結果を生むケースは少なくない。人間が見通すことができない要素が多いからだ。エネルギー分野で特に不確実なのは技術進化の方向性だ。未来が不確実な状況で特定の方向に完全に傾くのは無謀だ。全ての問題を一気に解決できる「銀の弾丸」のような技術は存在しない。潜在性がある複数の技術を適切に組み合わせた「散弾銃戦略」が賢明だ。ドグマ(教義)のような主観的確信に国家の運命を委ねる理由はない。