【寄稿】「グラ」の語源は日本語か、韓国語か

 世の中のさまざまな物の起源が気になるように、言葉の起源も気になる人が多い。私は小学校6年生の時に隣家に遊びに行き、本棚にあった英語の辞書で語源の説明を読んで以来、語源に大きな興味を感じるようになった。今の仕事は翻訳なので語源探求とは直接関係がないが、言葉の根源を探ってみると、翻訳時に意外なインスピレーションを得ることもある。

 語源探求は非常に専門的な領域だ。深く勉強していないと、語源学的・言語学的な裏付けがないままでたらめな説が飛び交う状況に陥りやすい。根拠もなく定説となってしまった語源やエセ語源もよく話題になる。なぜこのようにでたらめな語源の説が次々と生まれるのか調べてみるのも興味深い。

 韓国語と日本語は歴史的に密接な関係にあるので、語源に関するデマも多い。例えば「『侍(さむらい)』という日本語は『サウラビ(戦う男)』という韓国語から生まれた」という説がある。その昔、韓国から日本に渡った言葉もあるにはあるが、侍はもとから日本語だ。逆に「エヌリ(掛け値・値引き)」や「ヤコ(鼻っ柱)」のように韓国語なのに一見、日本語のように聞こえるので誤解されている単語もある。

 話やうそを意味する「グラ」も日本語だと誤解されている韓国語だ。グラという言葉を見るたび頭に浮かぶ言葉がある。インドネシア語でカメを意味する「クラクラ(kura-kura)」だ。グラとクラクラの間にもしかしたらある種の関係がないかと想像してみる。東南アジアから黒潮に乗って韓半島(朝鮮半島)にやって来た動植物は多いが、カメもその一つだ。『鼈主簿(ピョルジュブ)伝』という朝鮮時代の物語で、カメ(もともとの物語ではスッポン)はウサギに「グラ(うそ)」をついて竜宮に連れていくが、ウサギも「グラ(うそ)」をついて竜宮を脱出する。「グラ」をついて「グラ」にだまされたカメ。「グラ」はカメを意味するインドネシア語「クラクラ」から来たのだろうか。想像という帆を張って言葉の海を渡ってみるだけでも楽しくなる。

 語源を学術的に研究するのはもちろん、学者たちの役目だ。しかし、「グラ(話)」をしながら言葉を楽しむことは誰にでもできるだろう。さまざまな考えや話が交わされるようになったら、韓国語の世界はいっそう豊かになるのではないだろうか。

翻訳家シン・ギョンシク氏

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