「判事がなぜ歴史論争に決定を下すのか」
朴裕河(パク・ユハ)世宗大学教授が27日、控訴審で有罪判決を受けたことをめぐり、韓国の学界は「朴教授の著書の内容とは別に、学問の領域に属する問題について法廷が有罪判決を下したことは憂慮すべき」という反応を示した。
朴教授の著書に批判的な立場を取ってきた林志弦(イム・ジヒョン)西江大学教授(西洋史)は「『帝国の慰安婦』は被害者に対する共感や方法論的省察がないという点で問題が多い本だと思うが、それを法的に処罰するのはまた別の問題を生む」「こうしていては、歴史論争の最終決定者が学者ではなく判事に変わることになる状況」と語った。
李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授(政治学)は「学術分野の本なので、刑事処罰がなされたことが果たして適切なのかどうか疑問がある。民事訴訟を通した問題提起の方が適切なやり方だと思う」と語った。
海外でも、学問的研究の法的処罰には批判的な意見が多い。1996年、ナチスのユダヤ人虐殺を否定する英国の作家デイビッド・アーヴィングが、ユダヤ系の米国人歴史学者でエモリー大学教授のデボラ・リップシュタットと出版社を告訴した。アーヴィングは、リップシュタット教授の著書『Denying the Holocaust』(邦題『ホロコーストの真実』)が自分の名誉を棄損したと主張した、英国の法廷は2000年、無罪判決を下した。しかしその後、アーヴィングを刑事処罰すべきだという声が高まったとき、リップシュタット教授は「学問的論争の事案を法廷で判決してはならない」として起訴に反対する知識人の署名に加わった。
日本では、ノーベル文学賞の受賞作家、大江健三郎が1970年に出した現場取材記『沖縄ノート』が、2005年に名誉棄損の訴訟に巻き込まれた。太平洋戦争を生き残った軍人や遺族などが、「沖縄戦の当時、日本軍の将校が住民に集団自決を強要した」とする『沖縄ノート』の記述は名誉棄損だとして訴えを起こしたのだ。日本の高等裁判所は08年、「集団自決において日本軍の強制もしくは命令があったと評価できるだけの根拠がある」として大江健三郎の肩を持ち、11年には最高裁が無罪判決を出した。