今月16日に国会で開催された文化財庁に対する国政監査において、忠清南道牙山市の顕忠祠(し)に設置されている故・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領直筆の扁額(へんがく)が問題となった。与党「共に民主党」所属の安敏錫(アン・ミンソク)議員は金鍾陳(キム・ジョンジン)文化財庁長に対し「なぜ粛宗の額は見当たらず、朴正煕・元大統領のあの字があるのか」「あれこそまさに積弊だ」などとして説明を求めた。これに対して金庁長は「(朴元大統領直筆の扁額には)それなりの意味がある」と答弁した。これに安議員が「(文在寅〈ムン・ジェイン〉政権は)文化系の積弊清算を目的にあなたを庁長に任じたのではないか」と指摘すると、金庁長は「(専門家の意見を聞いて)検討したい」としていったん引き下がった。
朴元大統領は1967年に顕忠祠の整備事業を行った。今回問題となった新しい顕忠祠もその当時建設されたものだが、その際、朝鮮王朝第19代国王の粛宗が1707年に下賜した「顕忠祠」と書かれた扁額は、新しい顕忠祠から500メートルほど離れた旧顕忠祠に設置された。顕忠祠管理事務所の関係者は「旧顕忠祠は日本に支配されていた時代の1932年に国民から募金を集めて再建された。そのため粛宗直筆の扁額をここに設置することはそれなりに大きな意味がある」と説明した。ところが50年が過ぎた今になって朴元大統領の扁額が突然問題視されているが、これは朴元大統領の痕跡を消し去ろうとする意図に他ならない。この問題以外にも例えば郵政事業本部は朴元大統領誕生100年記念切手の発行を取りやめ、韓国国際協力団は来年から海外におけるセマウル運動関連の政府開発援助(ODA)の新規事業を取りやめることを決めた。韓国の政治はいつまでこのように権力者の顔色ばかりうかがうのだろうか。
また「積弊清算のためにあなたを文化財庁長に任命した」という安議員の発言とその態度も見過ごすわけにはいかない。各部処(省庁)のトップたちに求められる第1の義務が「積弊清算」だとすれば、この国は一体どこに向かうだろうか。文化財庁は文化財を発掘してこれを保護し、その価値を守り高める仕事に取り組むべきだが、今はそれよりも積弊清算の方が大事な仕事になったのか。安議員は金庁長に「あなたを庁長に任命してやったのだから、文句を言わず言うことを聞け」とでも言いたかったようだが、金庁長にとってこれほどの侮辱があるだろうか。金庁長は9級の地方公務員からスタートし、庁長にまで上り詰めたたたき上げだ。いくら国会議員でも最低限の礼儀は守るべきではないのか。