全力で打ち込む強力なダンクシュート。SLAM DUNKは、コミックのタイトルであると同時に、「戦慄」の同義語でもあり、止まっていた心筋に強い拍動をもたらす除細動器といわれる。
日本の漫画家、井上雄彦(50)が23歳のころに発表した『SLAM DUNK』は、1990年から6年にわたって連載され、日本国内だけでも1億2000万部以上が売れた。韓国には92年に紹介され、数回の改訂を経て、今では累積販売1000万部を超えた。既にスポーツコミックの金字塔となった同作をこまごま紹介するのは、笑われてしまうかもしれない。身長188センチの暴れん坊、「プクサン高校1年、カン・ベクホ」(湘北高校1年、桜木花道)がバスケ部に入り、仲間を得て勝負を繰り広げていく成長物語だ。「左手はそえるだけ…」「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」といった名台詞を的中させ、思春期の読者の魂に、消えることのない手のひらの跡をを残した。だから、この漫画を読んだ韓国の青少年が、なぜ急に目頭を熱くし、小遣いをはたいてエア・ジョーダンのバスケットシューズを買い、砂埃舞うグラウンドに飛び出さないといけなかったか、尋ねてはいけない。
キャラクターの力は、同作を安定的に売れる存在へと押し上げた根源的な要素だ。潜在力で武装した新人、カン・ベクホ。極端なところのあるエース、ソ・テウン(流川楓)。戻ってきた遊び人、炎の男チョン・テマン(三井寿)。おとなしくてきれいなマネージャー、チェ・ソヨン(赤木晴子)…。ぴったりつじつまの合ったこの韓国名は、日本的な部分を排除するために、当時『SLAM DUNK』の担当編集者だったチャン・ジョンスクさん(48)が付けたもの。チャンさんは「高校の卒業アルバムを探していき、友だちの名前を取って付けた」と語った。だから、ソン・テソプ(宮城リョータ)、チェ・チス(赤木剛憲)、ユン・デヒョプ(仙道彰)といった不滅の名前は、極めて「現実」なのだ。桜木花道、流川楓といった名前は、感情の面であまりにも遠いものだった。