米国のトランプ大統領と中国の習近平・国家主席は12日に緊急の電話会談を行った。中国の報道によると、習主席はトランプ大統領に「韓半島(朝鮮半島)における核問題の解決に向け、対話と説得という正確かつ大きな方向性は今後も堅持すべきだ」と訴えたという。単なるレトリックの繰り返しは全く相も変わらずだ。中国は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が対話や説得に応じて核を放棄することなどあり得ないことくらいよく知っている。中国が主張する「対話による解決」とは、たとえ北朝鮮の核を容認する結果になったとしても、北朝鮮政権の崩壊を招く衝突や制裁だけは避けたいという本音を言い換えたものに過ぎない。つまり中国の存在がなければ北朝鮮の核問題など簡単に解決できていたはずであり、言い換えれば核問題解決の最も大きな障害は中国の存在ということだ。
中国は2006年に北朝鮮が最初の核実験を行った直後から「外事領導小組」と呼ばれるワーキンググループを中心に大原則を定めたが、それは「北朝鮮の核を廃棄させるため北朝鮮を崩壊させるわけにはいかない」というものだった。韓半島(朝鮮半島)において米国の影響力が拡大するよりも、核武装した北朝鮮を手元に置く方がまだましということだ。しかも中国はその後もこの原則を忠実に守っている。何があっても中国が北朝鮮への原油支援をやめないのはそのためだ。金正恩氏も中国が立てたこの大原則を理解しているため、自分勝手な行動を続けることができるのだ。
米国のキッシンジャー元国務長官はウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿で「アジアにおける核武装を食い止めることは、米国よりも中国にとってより大きな利害のかかる問題」と指摘した。その指摘通り今の現状がこのまま進めば、必然的に日本、韓国、台湾と「核のドミノ」が続くのは避けられないが、中国はそうはならないと信じているようだ。しかしこれが間違っていることは今から示さねばならない。北朝鮮の核問題で最大の被害を受けるのは韓国だ。そのため北朝鮮の核兵器が実戦配備されれば、韓国も生存に向けいかなる戦略をとるべきか深く考えなければならない。それはキッシンジャー氏が指摘した方向以外にはあり得ないからだ。
とりあえずは今秋に予定されている中国共産党第19回全国代表大会で、北朝鮮に対する新たな政策方針が打ち出されるかに注目しなければならない。現時点では大きな変化は期待できないとみられるが、韓国政府は中国に特使を派遣するなど可能な限りの努力を傾け、中国に自らの方針を見直すよう説得を続けねばならない。