韓国の文化財窃盗団が日本の長崎県対馬市の寺から盗み、韓国に持ち込んだ「観世音菩薩坐像」について、本来の所有者とされる韓国・浮石寺(忠清南道瑞山市)に引き渡すよう命じる判決が大田地裁で下された。
大田地裁は26日、大韓仏教曹渓宗の浮石寺が韓国政府を相手取り起こした仏像引き渡し請求訴訟で「韓国政府は浮石寺に仏像を引き渡すように」と命じる判決を下した。判決では「仏像を移送する際は仏像内部に記録を刻み、その内容を明らかにするが、その記録は見つからなかった」とした上で「高麗時代に瑞州(現在の瑞山)へ倭寇(わこう)が侵入したとの記録と仏像の毀損(きそん)状態から判断すると、贈与・売買などの正常な方法ではなく、盗難や略奪によって対馬に運搬されたものとみられる」と説明した。
これに対し日本政府は同日、判決について強く反発した。NHKによると、菅義偉官房長官は同日午前、記者会見で「極めて残念だ。速やかに仏像が日本に返還されるよう韓国政府に適切な対応を求めていきたい」と述べた。仏像は日本で長崎県の指定有形文化財に登録されている。
仏像は2012年10月、韓国の窃盗団が対馬の観音寺から盗んだもの。窃盗団は「仏像は偽物」と偽って釜山から韓国国内に搬入したが、13年1月に検挙された。仏像の中から見つかった記録には、この仏像が1330年に韓国・瑞山の浮石寺に奉安するために制作されたと記載されていた。
浮石寺側は「仏像は倭寇によって略奪された」として仏像の所有権を主張してきた。だが韓国の文化財専門家たちは「仏像がどのようにして日本に渡ったのか、その搬出経緯が重要な争点だったが、略奪された可能性は高いものの決定的証拠がない」と指摘している。