【社説】道交法違反前科12犯の観光バス運転手が起こした惨事

 13日夜、京釜高速道路下り線彦陽分岐点付近で観光バスが全焼し、乗客10人が死亡、10人が負傷した。事故を起こしたバスは第1車線から第2車線に車線変更しようとして道路脇にあるコンクリート製ガードレールに衝突、直後に前方から火が出た。ドアはガードレールにふさがれて開かず、照明が消えた真っ暗なバスの中で乗客は脱出用ハンマーが見つけられず、ガラス窓を手や足でたたいたが割れなかった。運転手が消火器で運転席後部の座席のガラスを割り、避難できたのは一部の乗客だけだった。現行の規定では4本以上の脱出用ハンマーを備えておくことになっているが、これを守らないバスは多い。ハンマーがあっても見つけられないケースもよくある。しかも、車に火がついた状況でハンマーを見つけるのはなおのこと難しい。日本のようにバス出入口の反対側に非常口を設けるよう義務付けることも検討する必要がある。

 事故を起こしたバスの運転手は1988年以降で飲酒・無免許など道路交通法違反9件と交通事故の前科3件があるという。交通法規違反を繰り返し、事故を誘発する運転習慣を持つ人物だ。このような人物に大勢の人命を預ける大型バスの運転を任せたということ自体、言語道断だ。バスやトラックなど大型車の運転には厳しい資格要件を設けなくてはならない。しかし、現行法では高齢者・性犯罪者・殺人や強盗を犯した凶悪犯でなければ、大型車の運転が可能だ。今年7月に嶺東高速道路の蓬坪トンネルで5台が絡む追突事故を起こし、死傷者40人を出した観光バスの運転手も「飲酒運転三振アウト制」により運転免許証が2年間停止された後、免許証を再取得して運転中に事故を起こした。

 つい先日も覚せい剤を使用したトラック運転手7人や、朝から泥酔していたトラック運転手が逮捕された。このような状況が続いていることから、今では道路上でバス・トラックといった大型車を見ると心臓が縮む思いをするという市民も多い。大型車が交通法規を無視して走っていても取り締まりはほとんどない。それなのに政権交代のたびに「生計を立てるため」などの理由で、道路交通法違反者を大数赦免してきた。市民の中から多数の犠牲者が出ているのにもかかわらず、当局と業界の長年の癒着が根本的な対策作りの障害になっているという指摘もある。

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