【コラム】韓国はいつ「詐欺犯天国」の汚名を返上できるのか

 韓国の京畿道広州市で食肉加工業を営むA社長は以前、親しい知人と会った際、話のついでに事業資金が必要だと口にした。知人は自分が力になると言い「融資をあっせんしてやるから書類と実印を持ってこい」と勧めた。A社長は数日後、知人に書類を渡した。ところがそれから数カ月後、名前も知らない会社から3億ウォン(約3200万円)を返済するよう求められた。A社長がトイレに立ったすきに、知人が「A社長が自社の負債を返済する」という内容の書類にA社長の実印を押したのだった。

 A社長は知人を警察に告訴したが、警察は一度事情聴取しただけで書類送検し、検察はその翌日に「嫌疑なし」で不起訴処分とした。A社長は「告訴前にこの知人に会おうといわれ、飲食店に赴いたところ、警察幹部が同席していて驚いた」と語る。A社長は数年間でこうした詐欺に5回も遭った。

 法曹界で、詐欺は民事と刑事の中間に位置しているという。被害者が詐欺を刑事告訴すれば捜査機関は民事で解決しろと言い、民事訴訟を起こせば裁判所は先に加害者が刑事処分を受けた方がカネを簡単に取り戻せると言う。数百万ウォン(数十万円)の窃盗罪には厳罰を科すのに、被害が数千万ウォン(数百万円)から数億ウォン(数千万円)に上る詐欺罪は処罰が容易ではない。被害者の多くが詐欺犯を信じて自発的に財産を差し出すため、だまそうとする意図があったことを立証するのが難しいのだ。そのため、詐欺罪は「魂を破滅させる犯罪」と呼ばれる。

 こうした状況であるがゆえに、詐欺犯罪は増える一方だ。不況もこれに拍車をかけている。昨年の詐欺犯罪の発生件数は24万件余りと、5年前に比べ17.1%増加した。ここ3年間の詐欺による被害額が43兆ウォン(約4兆6000億円)に達するという統計もある。犯罪類型別の国別ランキングで、韓国は詐欺犯罪で世界1位だ。「元大統領の裏金」をエサにした詐欺からボイスフィッシング(電話を使った金融詐欺)まで、ありとあらゆる詐欺が横行している。数年前には地方都市の住民が集団で保険金詐欺に関与する事件が起こり、社会に衝撃が走った。言ってしまえば、詐欺は韓国の代表的な犯罪になってしまったのだ。「詐欺犯の天国」という汚名をいつになったら返上できるのか。

キム・ホンジン・読者サービスセンター長
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