韓国のある法律事務所の弁護士は、中国大企業の対韓投資に関する諮問に応じている。両国企業の事情をよく知る彼は「最近は国のことが心配でよく眠れない」と話した。「7-8年前、中国(ネットサービス企業)のバイドゥ(百度)とテンセント(騰訊控股)が韓国に来て学ぼうとしたとき、韓国企業は目もくれなかった。彼らが何をしようとしているのか、注意深く観察しなかった。(韓国ネットサービス大手の)ネイバーとダウムが中国で大金を使いながらも現地企業に投資しなかったのは、これら企業を見下していたせいが大きい。そのとき韓国のゲーム会社を買収したテンセントは、今では世界市場を掌握している」
韓国大企業の中国に対する「誤認」はさらに深刻だと、彼は指摘する。「数年前、中国(スマートフォンメーカーの)シャオミ(北京小米科技)の成長が尋常でなく、サムスンの幹部に注意を促したことがある。だがその幹部は『シャオミのような技術力のない企業は気にしない』と無視した。中国スマートフォン市場でシェア1位だったサムスンは、トップ5から押し出された。中国企業の動きを見逃した代償だ」「中国企業の幹部らは30代で英語を流ちょうに話し、地位に関係なく激しく討論する。韓国の大企業では官僚主義がまん延しており、中国に対する情報もなく、知ろうともしない」
筆者も先ごろ、天津市の静海県を取材した際に同じような経験をした。党書記や県長の口からは、その地域の歴史、経済現況、産業戦略に至るまでよどみなく出てきた。副県長は筆者たちに同行し、ひとつでも多く伝え、投資を呼び込もうと必死の様子だった。彼らはそろって「韓国は多くの分野で中国の上をいく。韓国から学ばなくては」と謙虚な姿勢を見せた。取材に同行した天津の韓国企業家も「中国の公務員の情熱は韓国の公務員をはるかにしのぐ」と語った。愛国心と使命感の強い公務員のおかげで、天津の浜海新区は韓国・仁川の松島よりスタートが遅かったにもかかわらず、企業7万社を誘致し、世界的な先端産業基地に浮上した。