元岩波社長に聞く「日本は軍国主義を追求しているの?」

【特集】韓日国交正常化50周年
「韓国は歴史を忘れたとしても、日本は忘れてはならない」
大塚信一・元岩波書店社長に聞く

元岩波社長に聞く「日本は軍国主義を追求しているの?」

 「明治維新以来150年近くもの間、日本は『西洋に追いつけ、追い越せ』というスローガンを掲げた。その結果、一時は世界第2位の経済大国にのし上がった。安倍政権は今もそのような掛け声を繰り返している。そのような考えの下で、周辺国にどれだけ大きな被害を与えたのかを振り返ろうとしない。問題は、日本国民の50%以上が安倍政権のそのような姿勢を支持しているということだ。

 岩波書店の大塚信一・元社長(76)はこう指摘した。大塚氏は1963年から2003年まで岩波書店に身を置いてきた。同社は日本の知性派の一翼を担ってきた出版社だ。大塚氏は同社の社長を退任後、志を共有する韓中日3カ国の出版関係者たちと共に「東アジア出版人会議」を結成、アジア共通の古書100冊を選んで、3カ国の言語で出版している。韓国の独立運動家、金九(キム・グ)の「白凡日誌」もその一つだ。

―今になって、日本はまた軍国主義を追求するのだろうか。

 「『軍国主義』という言葉では表現しない。しかし、かなり近い選択肢だ。かつての日本は西洋と同じやり方で大国になろうとした。日本の近代化の基本的な要素は植民地主義と軍国主義だった。若い世代はこのような認識を十分に持っていない。そんな状態で安倍政権が『日本は国際社会で再び大きな勢力を持たなければならない』と主張するため、それに魅きつけられている」

―安倍晋三首相は「日本が戦後、平和主義を実践した」と強調するが。

 「日本が直接戦争を引き起こしたわけではないが、朝鮮戦争やベトナム戦争を通じて日本経済は豊かになった。一面だけを見てはいけない。例えば、司馬遼太郎が『坂の上の雲』という小説を書いた。明治時代の青年たちが国家のために奮闘するという物語だ。『険しい坂道の上に雲があり、その下に広い世界がある』という表現は、日本人の勤勉さが大国への仲間入りを果たしたというメッセージだ。これは興味深いが、同時に危険でもある。小説は『坂道』で終わっても、歴史はそこで終わらなかったからだ」

―一方で「韓国はなぜ、エスカレートするのか」と問い掛けている。

 「2009年、中国で東アジア出版人会議が行われた。会議に同席した韓国の記者たちに「韓国・中国・台湾に対する贖罪(しょくざい)の認識が、この会議の基本だ」と説明した。翌日、その記者が私の元に来て『ありがとう。でももう数十年もたったことだから、謝らなくてもいい』と言った。それに対し私はこう答えた。『こちらこそ感謝するが、問題はやはり私たちの側にあった。韓国が歴史を忘れたとしても、日本は忘れてはならない』と」

東京=金秀恵(キム・スヘ)特派員
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