中国とタイは15日、中国・広州市でタイ南部に南シナ海とインド洋を結ぶ「クラ運河」を建設するための覚書に署名した。台湾紙・旺報が伝えた。
クラ運河プロジェクトは、タイ南部にあるクラ地峡を掘り、南シナ海とインド洋を結ぶ全長102キロメートルの運河を設けるものだ。完成すれば、これまで「アジアの関門」だったマラッカ海峡を通過せずに中東の石油やアジアの工業製品を輸送できるようになる。船舶でマラッカ海峡を通過する場合の航行距離は1200キロメートルで、所要時間を2-5日短縮可能だ。10万トン級タンカーの場合、輸送費を35万ドル(約4200万円)節減できる。
タイは17世紀末からクラ運河建設を検討してきたが、巨額の工事費用がかかるため実現していなかった。しかし、中国が新シルクロード戦略である「一帯一路」構想を推進し、道が開け始めた。中国は10年で280億ドル(約3兆3600億円)かかる工事費の大半を負担する見返りに一定期間の運河の事業権を求めているとされる。同紙は「覚書はクラ運河着工に向けた大きな一歩だ」と伝えた。
中国はクラ運河を通じ、米日を同時にけん制しようとしている。東南アジアは日本の経済的な影響圏にある。日本はベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ「東西経済回廊」で東南アジアを掌握している。タイは日本車のシェアが90%に達し、日本の自動車メーカーの東南アジア工場が集中している。中国は日本の中核的拠点であるタイに大運河を建設することで、アジアの物流を掌握しようとしている。中国はまた、日本の東西経済回廊に対抗し、中国雲南省、タイ、マレーシアを結ぶ南北経済回廊の整備を目指している。タイは日本の東西戦略と中国の南北戦略が交差する戦略的な拠点と言える。北京の外交筋は「中国は『アジア版パナマ運河』を掘り、日本の強固な東西回廊ブロックを一気に押し崩そうとしているのではないか」と指摘した。
中国は安全保障面でもクラ運河を必要としている。中国が輸入する石油の80%は米軍が掌握するマラッカ海峡を通過しなければならない。有事に際し、中国のエネルギー輸送路が遮断されかねないことを意味している。中国がマラッカ海峡を通らずに済むクラ運河を建設すれば、米軍による封鎖を無力化できる。一方、マラッカ海峡で物流の中心地であるシンガポールは深刻な打撃を受けることが避けられない。シンガポール港のコンテナ取扱量が世界2位なのは、マラッカ海峡が存在しているためだからだ。
現在中国資本は、クラ運河のほか、中南米のニカラグアで太平洋と大西洋を結ぶ第2のパナマ運河を建設している。地中海と紅海を結ぶスエズ運河の拡張工事にも投資を検討中だ。中国は世界の主要航路を掌握しようとしている格好だ。