韓国の高校野球大会はプロ野球に圧倒され「存続の危機」まで取りざたされているが、今年で100年を迎える日本の高校野球大会「全国高等学校野球選手権大会」は依然としてプロ野球顔負けの人気を享受している。試合が行われる兵庫県内の球場の名前にちなみ「夏の甲子園」と呼ばれるこの高校野球大会は、地方予選を通過した49校が毎年8月中旬の2週間で勝負を決める。観客80万人を動員し、昼間の中継にもかかわらず視聴率が33.7%(2006年決勝、東京での視聴率)をマークする国民的な野球大会だ。
夏の甲子園が国民的に愛されている理由の一つは「伝統」だ。気温30℃と、立っているだけでも倒れそうな真夏に試合をするという伝統が続いている。「熱中症で死者が出かねない」と分散開催を求める声もあるが、熱中症患者発生に備えて医師・看護師を待機させ、猛暑の中で試合を続けている。
日本で甲子園は「野球の聖地」という象徴性を持つ。負けたチームの選手たちが涙を流しながら甲子園球場の土を持ち帰る「儀式」も有名だ。再び甲子園の土を踏むという意志を込めた儀式だ。1958年に米軍統治下の沖縄の高校が米軍の検疫で甲子園の土の持ち込みを禁止されたことから、沖縄返還運動に火がついたこともあった。
このような象徴性が全国の高校野球選手17万人に「甲子園の土を踏みたい」という夢を植え付けている。少子高齢化で生徒数は急減しているが、それでもまだ4000前後の高校チームが出場している。選手不足でチームが作れない高校は地域連合チームで甲子園に挑む。韓国高校野球の聖地だった東大門運動場が閉鎖されたのとは対照的だ。
選手保護のため投球数を制限しようという声もあるが、以前と変わらず投球数に制限はない。「体を壊して選手生命が終わってもいい」と指から血を流しながら連投する姿に、日本国民は熱狂する。米大リーグに進出した日本の野球選手たちが頻繁に故障するのも「甲子園での『虐待』のためだ」という批判もあるが、こうした姿が「情熱」「挑戦」「純粋」という甲子園のイメージを作り、国民の関心を維持する原動力になっている。
公共放送NHKなど放送局や新聞も、甲子園を単なる野球の試合ではなく「人間ドラマ」と位置付けている。 NHKは夏に一日中「甲子園」本選の全試合をテレビ・ラジオで生中継する。国民的人気を受けて、民放も競い合うように特集を放送している。選手たちが流した汗に焦点を当てたドラマ風ドキュメンタリーもある。レギュラーだけでなく、控え選手や応援団も「主人公」だ。福島原発事故で電力不足が深刻化した2011年には、夏に甲子園野球のテレビ中継を見る人が急増するためブラックアウト(大規模停電)の懸念も取りざたされた。
夏の甲子園は朝日新聞社が主催しているが、ライバルの新聞社も夏はプロ野球より高校野球の方を大きく取り上げる。甲子園は「愛郷心」を刺激する。地方予選から地元放送局や新聞が詳しく紹介し、観客席がいっぱいになるほど関心を集める。そうしたプロセスを経て甲子園大会に出場した地元代表を、住民たちは一斉に応援する。
甲子園をテーマにした漫画・ドラマ・映画・小説も多い。「甲子園の星」がプロ野球のスターになることもある。大リーガーとして活躍した、あるいは現在活躍中の松井秀喜や田中将大も「甲子園の星」だった。