「火薬庫」化すすむ南シナ海

 中国は今月初め、ベトナムと領有権を争う南シナ海海域に10億ドル(約1020億円)相当の石油掘削装置(リグ)を設置した。これは昨年10月に中国の李克強首相がベトナムを訪れ、中国とベトナムが南シナ海の油田・ガス田を共同開発するとした約束を破ったものだ。ベトナムは強く反発。哨戒艦など艦船30隻余りを送り、中国側の資源調査を妨害した。

 この過程で、中国とベトナムの艦船は放水による攻防を展開した。13日から14日にかけては、ベトナムで反中デモが激化し、ベトナムに進出した中国系企業約1000カ所が放火などの被害を受けた。

 今回の紛争には米国も介入の動きを見せた。ケリー米国務長官は13日、中国の王毅外相と電話会談し、「最近の南シナ海での状況に強い懸念を表明する。中国の石油掘削装置が出現したことは挑発的行為だ」と批判した。

 これに対し、王毅外相は「米国は客観的で公正な態度を取るべきだ。米国は言行に注意しなければならない」と反論した。米軍第7艦隊の旗艦である揚陸指揮艦「ブルーリッジ」は最近、南シナ海に入り、中国の艦船2隻の写真を撮影して公開した。米軍が南シナ海での中国軍の動向を注視している点をアピールする狙いがあったとみられる。

 米国防総省のロバート・カプラン政策委員は2011年、外交専門誌『フォーリン・ポリシー』への寄稿で「21世紀の戦争は海洋で起きる。南シナ海が最前線になる」と警告した。カプラン氏の言葉通りに、南シナ海は既に東アジアの「火薬庫」と化したとの分析が聞かれる。

 中国がベトナムとの約束を破ったのは、先月末のオバマ米大統領が日本、フィリピンなどを歴訪し、対中包囲外交を繰り広げた直後だ。オバマ大統領は中国と日本の紛争地域である尖閣諸島(中国名・釣魚島)が米日安保条約の適用対象だと明言し、フィリピンに22年ぶりに米軍を駐留させることでも合意した。北京の外交筋は「中国の石油試掘は米国のアジア復帰戦略への対応とみられる。南シナ海が米中対立の場と化した」と指摘した。

 中国の目標は明らかだ。米国がカリブ海を自国の「湖」同然の存在としたように、南シナ海を中国のコントロール下に置くことだ。中国は南シナ海の面積の80%以上を「中国の海」だと主張している。南シナ海は石油や天然ガスなどの資源が豊富である上、世界の商船の3分の1が航行する海域だ。物流量はスエズ運河の6倍に達する。中国が輸入する石油の80%も南シナ海を通過する。東アジア経済圏の命脈を握る海域と言える。中国はアジアでの覇権を固める上でも南シナ海を掌握することが必要だ。

 米国は中国のそうした態度を看過しない態度を見せている。米国は最近、南シナ海でフィリピンと艦船120隻余りを動員した合同演習を実施した。フィリピンは米国を後ろ盾として、中国漁船1隻を違法操業の疑いで拿捕した。香港紙大公報は「中国は南シナ海の領有権を既成事実化しようとしている。中国の最終的な相手は米国だ」と報じた。

北京=アン・ヨンヒョン特派員
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