「金剛やRF16(どちらも偵察機)などは韓国領空内から偵察を行い、南浦-咸興の線まで映像情報を収集し…」
韓国国防部(省に相当)は8日、同部に出入りする記者に「韓国軍の映像情報収集能力」と題する報道参考資料を配布した。上記の一文は、この配布資料の一部だ。偵察機「金剛」は、韓国軍が独自の対北情報収集能力を強化するため1990年代末に導入した映像偵察機で、米軍のU2偵察機のようにカメラで写真を撮る。RF16偵察機は、KF16戦闘機にカメラなどの偵察装備を搭載したものだ。これまで、「金剛」の探知距離についてはメディアや専門家が何度も言及してきたが、保安事項に当たるため、韓国軍当局が公に言及したことはなかった。
さらに国防部は8日、陸軍のある軍団で運用している韓国製無人偵察機「ソンゴルメ(ハヤブサ)」と、韓国の中小企業が製造した小型無人偵察機「Remoeye」の様子もメディアに公開するという異例の措置を取った。野戦無人偵察機部隊も、同じく保安上の理由から、これまでメディアに公開されたことはほとんどなかった。一方、国防部の関係者は、韓国情報当局が推定する北朝鮮無人機の保有数も公開。それによると北朝鮮が保有する「パンヒョン1・2型」無人機の数は約300機に達するという。これもやはり、機密に分類されていた情報だ。
このところ相次ぐ北朝鮮の小型無人機の墜落で、韓国大統領府(青瓦台)や世論の厳しい批判を浴びている韓国軍は、よほど切羽詰まっているのだろう。北朝鮮に対しては韓国軍の能力を示して対北抑止力を誇示するとともに、韓国国民の安全保障をめぐる不安感を解消しようという観点から、今回こうした措置が取られたという。
しかし、これらの措置は、今月7日に朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が首席秘書官会議で韓国軍の態勢を強く批判した後になってようやく打ち出されたもので、後味の悪さが残る。一部からは「北朝鮮の無人機が、大統領府の上空ではなく前方地域や西北島しょ(西海〈黄海〉沖の北方限界線〈NLL〉近くにある島々)でしか発見されなかったとしたら、現在のように韓国軍・韓国政府が積極的に動いたかどうか疑問」という声も上がっている。