福島第一原子力発電所の汚染水流出問題について調査を行うため派遣された国際原子力機関(IAEA)の調査団が4日、東京都内で記者会見を行い「日本で流通する水産物については安全性が確保されている」と述べた。これに対し、同原発周辺の汚染水の放射性物質の濃度がむしろ上昇し、その原因すら究明できない状況の中、非現実的な免罪符を与えた、と指摘する声が出ている。
調査団のフアン・カルロス・レンティッホ団長(IAEA核燃料サイクル・放射性廃棄物技術部長)は「日本政府が海水や全ての水産物の流通システムに対するモニタリングシステムを開発したことを確認した。日本は食品中の放射性物質について、国際的にも厳しい管理基準を導入している」と述べた。その上で、福島第一原発の汚染水が同原発周辺の港湾内で完全にコントロールされているという、安倍晋三首相の主張について「汚染水が外に漏れる危険は一部あるが、ほとんどの汚染は原発の建物や周辺の港湾内に限られている」と語った。
だが、福島第一原発の観測用の井戸から、濃度が基準値の4万3000倍に上る放射性物質が、IAEAの発表のわずか2日前に検出されている。同原発を運営する東京電力は、今月2日に観測用の井戸から採取した地下水に含まれる、ストロンチウム90などの放射性物質の濃度が1リットル当たり130万ベクレルに達した、と4日発表した。先月4日にはこの数値は54万ベクレルで、わずか1カ月で約2.4倍も上昇したことになる。なお、海に放出する汚染水の基準値は1リットル当たり30ベクレルだ。