日本の福島原発沖で取れたタコが東京のスーパーマーケットに並んだ。2011年3月の津波被害以降、中断されていた販売が再開されたことになる。5キログラム入りの箱には「福島産」という文字に加え、「放射能無検出」という表示が付いていた。安値での投げ売りではなく、正常な価格での販売だった。それでも販売が開始されるや、すぐに売り切れたという。日本人はそれほど心臓が強いのか。放射能の類いは怖くないというのか。
先日、ソウル市内の光化門政府総合庁舎近くの食堂に入ると、予想外の出来事を経験した。メニューにある魚の煮付けを注文したところ、できないという。客が魚を不安がるので、メニューから外したというのだ。女性経営者は「青瓦台(大統領府)の食堂も魚を外したらしい」と話した。来店した大統領府職員から聞いた話だという。放射能をめぐる「怪談」に「青瓦台バージョン」まで登場したことになるが、それは事実無根だ。
韓国には福島原発周辺で取れた水産物は輸入されていない。他の日本の農水産物も徹底した放射能検査を行った上で輸入されており、安全性には問題はないと考えるべきだ。しかし、魚は売れず、刺身料理店は閑古鳥だ。これまで聞いたことがないようなさまざまなデマも飛び交っている。日本産だけならまだしも、放射能とは関係ない韓国産の水産物まで避ける現象をどう考えればよいのか。韓国が過敏なのか、日本が鈍感なのか。
福島原発事故は東京電力と日本政府のよる対応のまずさが事態を悪化させた人災だった。原発の炉心がメルトダウンしたため、現在も数十万人が避難生活を強いられている。韓国でこんなことが起きれば、恐らく大混乱が起きていたはずだ。数十人が刑務所行きとなり、責任者探しに国中が騒然としたに違いない。
福島の住民は1年前、原発事故の責任者には業務上の過失があるとして、約40人を告訴した。しかし、その捜査結果に世界が驚いた。日本の警察による結論は「全員嫌疑なし」だった。津波被害は予見が難しい自然災害であり、刑事責任は問えないというものだ。史上最悪の原発事故だが、処罰を受けた人は全くいない。われわれの常識では考えられない事実だ。
安倍首相は原発の放射能を完全にコントロールしていると豪語した。しかし、福島では現在も1日に300トンの汚染水が海に漏れている。完全なコントロールどころか、放射能遮断システムの至る所にほころびが見られる。これが韓国だったならば、民衆による反乱レベルの国民的抵抗が起きていただろう。牛海綿状脳症(BSE)をめぐるどうしようもないデマだけで、国が騒然としたわれわれだ。