日本はなぜ朝鮮王室儀軌を欲しがったのか

 昨年8月、NHKは『朝鮮文化遺産 百年の流転』と題するドキュメンタリー番組を放送した。植民地時代に朝鮮総督府によって日本に持ち出された、朝鮮王室儀軌81種・167冊の顛末(てんまつ)を追った番組だった。本書は、同番組を担当した2人のプロデューサーが、宮内庁やソウル大学奎章閣韓国学研究院、韓日両国の専門家らを取材した記録だ。

 朝鮮王室儀軌が宮内庁の手に渡ったのは、1922年5月のこと。朝鮮総督府が「寄贈」するという形式を取った。取材チームはまず、宮内庁が「無償譲与」を要請した文書を発掘した。日本は1919年3月、高宗の国葬を神道形式で執り行ったところ、朝鮮の民衆の激しい抵抗に遭った。そこで朝鮮の儀礼を研究するため、儀軌を入手したと考えられている。1926年に純宗の国葬を行った際には、朝鮮の伝統的な形式で執り行い、民心を掌握することに「成功」したという。

 国王の国葬では、国王の諡(おくりな=生前の徳や行いに基づいて死者に贈る称号)を「銘旌(めいせい)」と呼ばれる旗に書く儀式があるが、本書は純宗の国葬でこの銘旌が別の旗に取り換えられた点も指摘している。朝鮮・日本双方の葬礼委員は、純宗の諡を「皇帝」とすべきか、日韓併合時に定めた「李王」にすべきかをめぐって対立した。最終的には、総督府ナンバー2の湯浅倉平政務総監が、問題の種となった銘旌を取り除き、黄色と白の絹で作った旗に取り換えることで決着したという。172ページ、9500ウォン(約670円)。

金基哲(キム・ギチョル)記者
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  • 【新刊】天川恵美子・木村洋一郎著、チョ・ヤンウク訳『朝鮮王室儀軌の秘密』(深い青社)

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