「4種類の主力品目は米国から正式に(技術提供を)拒絶されたので、欧州との国際協力を通して獲得し、韓国の国内技術を活用して開発する計画です」
2015年9月、当時の張明鎮(チャン・ミョンジン)防衛事業庁長は韓国国会の国政監査で、「KFX(韓国型戦闘機)」開発に必須の4大核心技術の移転を米国が公式に拒否したことを確認しつつこのように答弁した。
4大核心技術とは「AESA(アクティブ電子走査アレイ)レ..
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「4種類の主力品目は米国から正式に(技術提供を)拒絶されたので、欧州との国際協力を通して獲得し、韓国の国内技術を活用して開発する計画です」
2015年9月、当時の張明鎮(チャン・ミョンジン)防衛事業庁長は韓国国会の国政監査で、「KFX(韓国型戦闘機)」開発に必須の4大核心技術の移転を米国が公式に拒否したことを確認しつつこのように答弁した。
4大核心技術とは「AESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダー」と「赤外線捜索・追尾システム(IRST)」「電子光学ターゲティング・ポッド(EOTGP)」「電子戦ジャマー(かく乱装置)」統合技術だった。これらはKF-Xが目標を捕捉し、精密攻撃を行い、電子戦で生き残る上で必須の装備だ。
当時、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)空軍参謀総長は国政監査で「米国が4大技術を提供しなくとも、KFXを開発する上で問題はない」と声を大にしたが、これを額面通りに信じる人は多くなかった。数十種類の戦闘機を開発・生産してきた先進諸国であっても、普通は新型戦闘機を開発するのに10年以上の時間がかかるからだ。本格的な戦闘機を初めて作ってみる韓国が、先進国の核心技術支援なしに10年以内にきちんと開発できるのだろうか-という、至極当然の疑問だった。
それから5年が経過した昨年8月、ハンファ・システム竜仁総合研究所では、KFXに搭載するAESAレーダーの試作品出庫式が開かれた。AESAレーダーとは、トンボの複眼のように、モジュール(送受信装置)が1024個収められた先端技術の結晶体だ。世界で12番目に開発した。その1カ月後には、KAI(韓国航空宇宙産業)でKFX試作機の最終組み立て着手行事が開催された。
その結果物であるKFX試作1号機を一般に公開する出庫式行事が、今週中に開かれる。2001年3月に金大中(キム・デジュン)大統領が空軍士官学校の卒業式で「2015年までに最新鋭の韓国製戦闘機を開発する」と宣言してから20年を経て、韓国型戦闘機の夢が実現するのだ。KFXは第4世代の戦闘機だが、一部に第5世代ステルス機の性能を備えており、4.5世代戦闘機と呼ばれる。世界最強のステルス機である米国F22「ラプター」と似ていて、「ベビー・ラプター」という別名も付いた。試作1号機はおよそ22万個のパーツ、7000個の構造物、およそ1200種のチューブおよび配管などから成っている。
KFXは、檀君以来最大の兵器開発および配備事業と呼ばれる。開発費と120機の量産費用を合わせると18兆ウォン(現在のレートで約1兆7700億円。以下同じ)に達する天文学的な額のお金がかかる。専門家らは、KFXは韓国初の本格的な国産戦闘機だという象徴的意味のほかに、幾つか実質的な意味も持っていると語る。まず、韓国が望む時期に、速やかに戦闘機を整備することができ、費用も大幅に減らせるという点だ。現在の韓国空軍の主力戦闘機であるKF16とF15Kはいずれも米国製で、修理パーツの確保問題などのため戦闘機の正常な稼働に問題を生じるケースが少なくない。過去5年間に修理パーツ不足で飛行が不可能になった事例は、F15Kが535件、KF16が548件に達した。一方、国産の戦闘機は速やかな整備が可能で、およそ30年間の累積運用・維持費もはるかに安い。
第2は、各種のミサイルや爆弾など韓国製の武装を、韓国の思い通りに搭載できるという点だ。これまでは、韓国が国産ミサイルを作っても、これを米国から輸入したF15Kなどに搭載しようと思ったら数百億ウォン(100億ウォン=9億8000万円)以上のシステム統合(連動)費用を支払わなければならず、韓国のミサイルの秘密(ソースコード)を米国側に提供しなければならないという問題もあった。F15Kに欧州製のタウルス長距離空対地ミサイルを搭載する際も、800億ウォン(約78億円)もの統合費用を米国企業に支払わなければならなかった。
さらにKFXには、北朝鮮の核ミサイルの脅威や中・ロ・日など周辺大国の軍事的脅威に対応できる韓国製「毒針兵器」類が搭載される予定だ。国防科学研究所などが既に開発中、もしくは今後開発する韓国製「毒針兵器」としては、超音速巡航ミサイル、極超音速ミサイル、長距離空対地ミサイル、そしてブーストフェイズ要撃ミサイルなどが挙げられる。韓国製超音速巡航ミサイルは、有事の際にKFXなどから発射され、中国の空母や水上艦などを撃沈できる兵器だ。極超音速ミサイルはマッハ5以上の超高速で飛行し、ソウルから平壌上空までわずか1分15秒で到達できる。また国防科学研究所は、北朝鮮の弾道ミサイルを発射直後のブーストフェイズ中にKFXから撃った高速ミサイル(要撃弾)で迎撃する兵器システム開発も進めている。北のミサイルをブーストフェイズで迎撃すれば、ミサイルの破片が韓国の領域に落ちることで生じる被害を予防できることになる。
だが、出庫式を行ったからといって、これらの兵器類をすぐに積むことになるわけではない。今後およそ1年間の地上試験を経て、来年から2026年まで、およそ2000回の飛行試験を行わなければならないからだ。この過程でどんな難関が待ち構えているか、誰にも分からない。また、北朝鮮はもちろん中・ロなど周辺諸国のハッキングの可能性にも備えなければならない。元青瓦台(韓国大統領府)安全保障特別補佐でサイバー専門家の林鍾仁(イム・ジョンイン)高麗大学教授は「KFX開発プログラムにバックドア(不正侵入経路)が仕込んであったら、後で知らぬ間に作動不能事態などに見舞われかねない」とし「KFXのソフトウエアの比重はとても高いのに、ハッキング問題への関心が特になさそうなのが懸念される」と語った。
一部に懸念や慎重論はあるが、過去およそ10年にわたって順調に開発を進め、予定通り出庫式を行うことになったのは十分拍手に値する。今年2月、慶尚南道泗川のKFX試作1号機組み立て現場で会ったKAI関係者らは、予想よりも淡々とした表情で「今からが始まり」と強調した。KFX開発が成功裏に完了し、「毒針兵器」を搭載した韓国型戦略兵器プラットフォームとして位置付けられることを期待する。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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