▲24日午前、ソウル市江南区の宣陵駅近くで、歩道に電動キックボードが数台止まっていた。ヘルメットをかぶらずに電動キックボードに乗った場合、過料を科す法律が施行されて以降、電動キックボード利用客は急減している。写真=コ・ウンホ記者

 ソウル市冠岳区奉天洞に住む会社員チャン・ジンヘさん(28)はこれまで「電動キックボード」を愛用していた。仕事帰りに地下鉄2号線奉天駅で降りてキックボードに乗れば、坂の上の家まで10分弱で行けるからだ。同じ道を歩けば20分かかる。料金はタクシーの基本料金よりも安い3000ウォン(約290円)台だ。ところが、13日からは電動キックボードに乗っていない。ヘルメットの着用が義務付けられたためだ。チャンさんは「13日からはヘルメットをしなければ過料2万ウォン(約1900円)が科せられると聞き、乗らないことにした。ヘルメットを買って通勤の時に持ち歩くくらいなら、普通に歩いて行くことにした」と語った。

 政府が電動キックボードのヘルメット着用を義務付け、違反時は過料2万ウォンを科すという道路交通法改正案を施行した13日以降、市民の電動キックボード利用は大幅に減少した。安全のための措置が、共用ヘルメットなど利用者のための代案もないまま、政府・自治体がまず規制から始めたため、「新たな移動手段として注目されていたキックボード産業そのものが委縮してしまうかもしれない」と懸念の声も聞かれる。

 キックボード業者14社からなる「パーソナル・モビリティ産業協議会」が24日に明らかにしたところによると、改正道路交通法の施行以降、国内キックボード業者の売上高は30-50%急減したという。匿名を希望する複数のキックボード業者は「通勤・通学に利用する会社員や大学生たちが主な顧客だが、ヘルメット着用に負担を感じる人々が利用を敬遠し、売り上げが半分近く減った」と話す。会社員のシムさん(29)は「キックボードは急いでいる時に便利だから乗るのであって、誰が朝セットした髪を崩してまで、いちいちヘルメットを持ち歩きながら乗るだろうか」と言った。

 業者の中には自主的に「公共ヘルメット」も付けているが、新型コロナ感染症や汗など衛生上の心配から、実際の利用者は多くないという。以前のソウル市公共自転車「タルンイ」も同様の経過をたどったが、結局ヘルメット義務化条項は死文化した。キックボード業界では「いっそのこと最高速度を時速25キロメートルから10キロメートルに引き下げるから、ヘルメット処罰条項をなくしてほしい」と要求している。しかし、警察庁関係者は「既に立法過程で議論が終わったことで、利用者の安全面から受け入れられない提案だ」としている。

 20日には「キックボードの駐停車違反時はキックボード業者にレッカー料を各4万ウォン(約3800円)科す」というソウル市条例も恐怖になった。今後は別途にスペースを作り、その場所だけ駐停車が可能なように規制する計画だ。会社員のイム・ソンスさん(29)は「キックボードに乗るのは、公共交通機関では行きにくい路地や家の前まで気楽に乗って行けるからだ。特定の区域でしか借りられず、返却もできないなら、そうしたメリットは大幅に下がるだろう」と語った。

ホーム TOP